非定常熱線(トランジエント・ホットワイヤー)法 によるエンジンクーラントの熱伝導率測定
はじめに
一般的に、エンジンクーラントは水のみでは冷却水として向かないとされており、主原料は水の他、凍結防止剤の効 果を利用したエチレングリコールである。そこで、エチレングリコールと水を混合させてクーラントとして使用している が、この混合比によって冷却効率(熱伝導率)が変化するため、クーラントの冷却性能とエチレングリコールの濃度は 密接な関係にある。クーラントがエンジン内で凍結すると、エンジンやラジエターを破損させるおそれがあるため、不 凍性能が備わっていることが、必要不可欠である。この性能は、クーラントの原液濃度を濃くすることで、高い性能を 発揮する。他方、エンジンで発生する熱量を安定してコントロールするには冷却性能も必要となるため、この効果は、 クーラントの原液濃度を薄めたほうが高い性能を発揮する。エンジン冷却効率と不凍性能は反比例の関係にあり、 この2つの性能を両立させるために、使用地域の気温や夏冬の温度差に合わせた濃度に調整することが重要となる。 TRIDENT/THWセンサーは、ASTM D7896に準拠しており、クーラントの熱伝導率の濃度依存性の評価に適してい る。
測定・解析例
- 測定試料:蒸留水、エチレングルコール(25%、50%、100%)
- 使用装置:熱伝導率測定装置 TRIDENT/THWセンサー(流体専用)
- サンプルの準備: THW容器に測定サンプルを充填(45mL、ねじ山の底まで)し、THWセンサーを容器内にゆっくり と配置し、その後、容器をゆっくりと回転させてセンサーを容器に密閉、固定する。

TRIDENTコントローラとTHWセンサー

エチレングリコールの熱伝導率の濃度依存性結果(室温27℃)は、クーラントの濃度が増加すると、熱伝導率が直 線的に減少する(エンジン冷却効果は下がる)ことを示している。エンジン冷却効果を上げるにはクーラントの濃度を 下げる必要がある。この特性を利用し、一般的に、クーラントの濃度は30%~60%が推奨されており、熱伝導率は、 0.487~0.385 W/mK 相当になることが分かった。 TRIDENT/THW センサーを用いることで、短時間にて、クーラントの熱伝導率を簡便に評価でき、適切な濃度の設 定に有効な手段となる。
参考:ASTM D7896、過渡熱線液体熱伝導率法によるエンジン冷却材および関連流体の熱伝導率、熱拡散率およ び体積熱容量の標準試験法
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