無機フィラー(熱伝導性フィラー)の熱伝導率測定

アプリケーションノート B-TA4016

はじめに

電子機器の小型化、高集積化、高性能化に伴い、機器の発熱による高温化が重大な問題となっています。これによ り絶縁性が求められる樹脂材料の高熱伝導化の要望が高まり、高熱伝導性の樹脂材料開発が急務になっています。 樹脂材料はセラミックスや金属材料と比較して熱伝導率が一桁以上低く、樹脂自体の熱伝導率を向上させるには限 界があり、このため一般的にはバルク材として高い熱伝導率をもったセラミックス、金属、カーボンなどの無機フィラ ー粉末(熱伝導性フィラー)を充填した樹脂複合材料とすることで熱伝導率を向上させています。(1)

他方、一般に粉体の熱伝導率はバルク体の2-3桁低い値をもつことが知られており、加えて粉末状の試料は外力が 加わると形状(充填密度)が変形し、みかけの熱伝導率も異なります。(2)

MTPSセンサーのCompression Test Accessory (圧縮試験アクセサリー:CTA)を用いて代表的な熱伝導性フィラ ー粉末への外力(加圧量)を増加させたときの熱伝導率の変化を測定しました。

測定・解析例

  • 測定試料:α-アルミナ粉末(Al2O3)、石英粉末(SiO2)、窒化アルミニウム粉末(AlN)
  • 使用装置:熱伝導率測定装置 TRIDENT/MTPSセンサー(液体&粉体モード)&圧縮試験アクセサリー(CTA)
B-TA4016_figure1_thermal-conductivity

2000gFの荷重条件下においては3種類の粉末無機フィラーの熱伝導率値の序列はバルク材と同じ傾向を示す一方 で、特に低荷重条件(<1000gF)ではSiO2とAl2O3粉末において序列値が逆転する結果が得られました。粒子間に空 隙が多い粉末材料の熱伝導率値はバルク材の熱物性とは全く異なり、複数の因子(素材、粒径、粒子の硬さ、空間 気体など)の合計として測定されます。例えば、SiO2粉末は粒子の硬度が高いため、CTAによる圧縮条件に大きく依 存しない熱伝導率が得られていると考えられます。このように、フィラー粉末の熱伝導率は空隙の存在形態などの影 響が大きく関わり、バルク材の値や計算だけでは評価が難しくなることが分かります。

参考文献

(1). 村野耕平,長野県工技センター研報,No.15, p.M5-M9 (2020).
(2). B-TA 4004_粉末材料の熱伝導率測定_ApplicationNote_S0128ja
(3). 電子機器・部品用放熱材料の高熱伝導化および熱伝導性の測定・評価技術、技術情報協会.

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