PTFEの転移測定
はじめに
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はフッ素樹脂のひとつで、高い耐熱性、低摩擦係数、高い耐薬品性など非常に高い特性をもつ樹脂として様々な用途に利用されています。
しかしながらPTFEは室温付近に転移点をもち、これにより室温付近の熱膨張に特異点があるため注意が必要です。
今回、DSCにて転移温度を、TMAにて熱膨張を測定し、PTFEの室温付近の熱挙動について測定しました。
測定・解析例
市販のPTFE板をカットし測定試料としました。
DSC測定では試料量13mgにて-50℃から100℃まで3℃/minで昇温しました。
TMAでは試料を5mm×5mm×2mmに切り出し、一旦200℃まで加熱し熱履歴を除いた後、厚み方向(試料長2mm)について-50℃から80℃まで3℃/minで昇温しました。
DSC測定結果を図1に、TMA測定結果を図2に示します。
DSC測定結果では20℃付近と30℃付近に2つの吸熱ピークがみられ、2段階で転移していることがわかります。
TMA測定結果においては20℃付近で急激に膨張が大きくなり、23℃付近で一旦収まりますが、その後30℃付近で、もう一段階小さな変曲がみられています。
DSC測定結果における転移温度とTMA測定結果における膨張の変曲温度は一致しており、PTFEは2つの転移とそれに伴って2段階で熱膨張の変化が起こることがわかります。
この結果では特に1つ目の転移におけるPTFEの膨張変化が大きく、転移前後の熱膨張に比べ、転移温度範囲内では急激に膨張が大きくなっています。この温度が20℃から30℃の範囲と室温付近においてPTFEは少しの温度変化で寸法が特に大きく変わることがわかります。
このように、熱分析を用いて材料の熱特性を調べることで、材料を取り扱うにあたっての注意点を把握することができます。
図1 PTFEのDSC測定結果
図2 PTFEのTMA測定結果
装置・推奨ソフトウェア
