室温以下におけるH₂Oの気化速度
アプリケーションノート
B-TA1044
はじめに
TG-DTAは材料の加熱時の重量変化を測定することで材料の蒸発・昇華や脱水挙動を測定できますが、室温で蒸発や昇華、脱水してしまう材料では、しばしば室温以下からのTG-DTA測定が求められます。電気冷却アタッチメントを搭載した低温TG-DTAは-40℃まで冷却可能であるため、室温以下での試料の重量変化を測定することが可能となります。
今回蒸留水を冷却、昇温することで室温以下の蒸留水の重量変化について測定を行いました。
測定・解析例
蒸留水約5mgを測定試料とし、He雰囲気中にて-40℃まで降温後100℃まで昇温した低温TG-DTA測定結果を下図に示します。
TG-DTA測定結果では測定開始直後より降温過程においてH2Oの蒸発による減量が見られますが、降温するにしたがって減量速度は遅くなっています。-20℃で結晶化による発熱ピークが見られ、H2Oは固体化しその後の減量は昇華となります。-40℃でTG曲線はほぼフラットになっており、-40℃ではH2Oの昇華速度は非常に遅いことがわかります。その後、昇温過程では温度上昇に従って昇華速度が速くなり、0℃に融解による吸熱ピークが見られた後、今回の測定条件では40℃付近でH2Oは100%気化しています。
DTG曲線はTGの微分曲線で試料の減量速度を表すことになります。DTG曲線において、0℃では-2%/min、20℃では7%/minの減量速度と読み取られ、室温(20℃)付近に比べ0℃での揮発速度は1/3以下の速度であることが読み取れます。
このように通常は室温以上の減量速度についてのみTG-DTAで測定されますが、低温TG-DTAを用いることで室温以下の減量速度(揮発速度)について評価することが可能となります。
図 蒸留水の低温TG-DTA測定結果
装置・推奨ソフトウェア
