MOFの吸着量の評価
はじめに
MOF: Metal Organic Frameworks(金属有機構造体)とは金属イオンと架橋配位子が形成する細孔特性を有し、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質材料(三次元ミクロポーラス材料)です。CO2をMOFと反応させて分離回収する吸着分離法は効率的なガス貯蔵・分離・イオン輸送など様々な応用に期待されています。
今回、HKUST-1について室温でのH2O、CO2の吸着量と試料の色の変化について試料観察TG-DTAを用いて確認しました。
測定・解析例
前処理として180℃まで昇温後、室温まで冷却した試料について、下図(a)はCO2吸着時における試料観察TG-DTA測定結果を、(b)はH2O吸着時における試料観察TG-DTA測定結果を示します。
前処理では(a)はHe雰囲気中で、(b)はN2雰囲気(ドライ)中にて180℃まで昇温し、吸着物を脱離させた後、室温まで冷却しました。(a)ではその後雰囲気をCO2雰囲気に変更するとCO2の吸着による11.7%の増量が見られます。また再度He雰囲気に変更することで吸着したCO2を速やかに放出(減量)していることがわかります。(b)ではN2ドライ雰囲気からN2加湿(25℃80%RH)雰囲気に変更するとH2Oの吸着による33.2%の増量が見られます。その後ドライ雰囲気に変更することで脱水による減量が見られますが、その減量は緩やかに減量していることがわかります。また測定時の試料画像を比較すると、前処理後の試料は濃い青色ですが、CO2の吸着時には色の変化は見られず、H2Oを吸着することで水色に変化しています。この色の変化はH2Oを吸着することでCu2+サイトが水和し水色に変化していると推察されます。このようにHKUST-1は吸着するガスの種類によって吸着量や吸脱着速度、試料の色が異なることがわかります。
図 前処理後の試料観察TG-DTA測定結果 (a)測定雰囲気:He→CO2→He
(b)測定雰囲気:ドライ→25℃80%RH→ドライ(ベースガスN2)
(名古屋大学 松田亮太郎先生監修)
(試料提供 名古屋大学 松田亮太郎先生、日下心平先生)
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