ナノスケールX線顕微鏡によるリチウムイオン電池用正極の構造評価と粒径分布解析

アプリケーションノート B-XRI1038

はじめに

リチウムイオン電池の正極では、正極活物質や空隙の大きさや量、混合均一性が、出力特性やサイクル寿命などの電池特性に影響します。そのため、材料設計や製造条件の最適化には、内部構造を3次元的に把握し、粒径分布や空隙率を評価することが有効です。SEM観察などの断面評価手法では、観察領域が切断面に限られ、構造観察や定量評価は2次元的になります。本アプリノートでは、超高分解能X線CTであるナノスケールX線顕微鏡を用いてリチウムイオン電池用正極を非破壊で可視化し、粒子と空隙の体積分率および粒径分布を評価した事例を紹介します。

測定・解析例

ナノスケールX線顕微鏡を用いて、Mn系酸化物を活物質とするリチウムイオン電池用正極を画素サイズ0.35 µmでCT撮影しました。得られた断層画像では、数 µm~数十 µmの粒子が確認されました(図1)。また、粗大粒子内に微細粒子が存在している構造も観察されました。この3次元画像を用いて粒子と空隙の体積分率および粒径分布を評価しました。

B-XRI1038_fig1_jp図1 リチウムイオン電池用正極の断層画像

正極における内部構造を評価するため、粒子と空隙をセグメンテーションしました。粒子と空隙の体積分率はそれぞれ、81 vol%、19 vol%でした(図2)。粒子の構造を抽出し、STL形式等の3次元モデルデータとして出力することで、各種シミュレーションへの適用も可能です。

B-XRI1038_fig2_jp図2 リチウムイオン電池用正極の立体画像
(左:セグメンテーション前、中央:粒子のみ表示、右:空隙のみ表示)

次に、粒子の同等直径を算出し、その分布を求めました。なお、同等直径とは、各粒子と同一体積を持つ球の直径です。図3では同等直径に応じて粒子を色分けしており、図4にはその粒径分布を示しています。

B-XRI1038_fig3_jp図3 同等直径に基づいて色分けした粒子の立体画像

B-XRI1038_fig4_jp図4 同等直径に基づいた粒径分布

表1には、同等直径に基づいた累積体積分布を示しています。D10、D50、D90は、累積体積割合がそれぞれ10%、50%、90%となる粒径です。本試料では、D10が7.0 µm、D50が15.3 µm、D90が26.0 µmでした。これらの指標を用いることで、粒子の代表的な粒径と粒径分布の広がりを定量的に評価できます。

表1 同等直径を指標とした粒径解析結果

D10 D50 D90
7.0 µm 15.3 µm 26.0 µm

以上のように正極の内部構造や粒径分布を定量評価し、電池特性と関連付けることで、材料設計や製造条件の最適化に有効な知見を得ることができます。

推奨装置・ソフトウェア

  • ナノスケールX線顕微鏡 CT Lab HR160
  • 産業用X線CTデータ解析ソフトウェア VGSTUDIO MAX*(フォーム/パウダー解析モジュール)
*VGSTUDIO MAXはHexagon Manufacturing Intelligence株式会社の製品です。

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