概要:
2025年の単結晶X線構造解析ウェビナーを視聴し、レベルアップしたみなさま、新たな課題に直面されていませんか?
今回は、昨年のウェビナーをご視聴いただき、「学んだ内容を実践したけど上手くいかなかった」、「測定や構造解析について疑問点が出てきた」という方々を対象に、質疑応答メインのウェビナーを開催します!
本ウェビナーは前半と後半の2回に分けて実施します。後半は、2025年に開催した単結晶構造解析セミナー第5回から第8回の内容(構造解析の流れからディスオーダーや双晶への対応)に関する簡単に振り返った後、みなさまからの質問にお答えいたします。事前にオンデマンド配信動画をご視聴いただき、ご質問を準備したうえでご参加いただくことをおすすめします。(単結晶X線構造解析シリーズ )
※ 対象ソフトウェアはCrysAlisᴾʳᵒおよびOlex2であり、低分子結晶を対象とした内容です。また、本ウェビナーでは説明スライドの配布および動画の公開は行いません。あらかじめご了承ください。
このセミナーで学べること
- 実際の構造解析の手順や障壁となる問題の対策方法
- 気を付けるべきポイントや日頃感じている疑問の答え
こんな方におすすめ!
- 単結晶X線構造解析の経験が少ない初心者の方
- 日常的に装置を使用されている中級者の方
- 単結晶X線構造解析 基礎講座ウェビナーをご視聴いただいた方
Q&A:
Q1 : monoclinicでb軸から、a軸やc軸に軸変換する方法と、その必要性について教えてください。
A: 結晶軸の標準的な選び方は定められており、単斜晶(monoclinic)の場合は主軸をbにとり、c<aかつβが出来るだけ90°に近い鈍角を取るようにします。ご質問頂きました"主軸をb軸からa軸やc軸に変換するケース"は、まだ軸設定が定まっていない時期に報告された古い文献との互換性をとる際に使われることが有ります。 ほとんど使う機会のないコマンドですが、Olex2のGUI上にて主軸の変換は可能です。Olex2にて単斜晶の構造解析データを開いていただき、GUI上に直接"sgs_a"もしくは"sgs_c"と入力し、Enterを押してください(アンダーバーは半角スペースを意味しています)。主軸がa軸もしくはc軸に変換されます。元の標準軸設定に戻したい場合には"sgs_b"と入力すれば戻ります。

Q2 : 回折強度が弱い場合の対処として、結晶を替える、露光時間を長くする、撮影枚数を増やす以外の改善策はあるのでしょうか。
A: 回折強度が弱い場合は、より大きく質の高い単結晶に変更する/露光時間を延ばす/より強力なX線源を搭載した装置を使用するといった解決策が一般的です。その他に検討して頂いたほうが良い事項は下記となります。
- "Cu線源は有機結晶向けであり、金属原子を含む結晶に不向き"と認識されている方も多いかと思いますが、Cu線源の入射X線強度はMo線源より強いため、結晶性が低い場合や微小結晶の場合に有効な解決策となる可能性があります。
- 逆に"重い元素を含む巨大な結晶"をCu線源で測定しますと、X線が透過せず、回折が得られない場合が有りますのでご注意ください。
- 結晶をマウントする際に使用するオイルが原因で結晶が痛んでいる可能性があります。別の種類のオイルを使用してみてください。
- 低温条件下での測定は利点ばかりと言われていますが、オイルと同様に結晶との相性があります。100 K以外の条件も検討してみてください。
高角側の回折強度が得られていない等、結晶性が著しく低い場合と考えられる場合は、上記対策を実行しても改善が見込めない可能性が高いため、結晶化条件の再検討を行ったほうが良いかと思います。
Q3 : ある元素に水素が3つ結合しているはずだが対称性により6つ結合しているように見える場合の対処を教えてください。
A: 特殊位置"に起因するディスオーダーが生じているものかと思われます。本内容はオンデマンド配信第7回の20分50秒付近でも説明されておりますが、こちらでもメチル基が特殊位置上に存在している場合を例に挙げて説明をいたします。 通常解析時には①の画像のように、メチル基が問題なく存在しているように見えますが、拡張表示(Ctrl+GもしくはPacking)を実施すると、画像②のように水素原子が6つ存在し、かつそれぞれの原子間距離が近いために、全てが結合を生じてしまっております。そこで、画像①-1にて緑枠で囲った水素を全てクリックし選択状態とした後に、右クリックでPartを"-1"に設定してください。この設定は"対称操作によって発生させた分子自身との結合を持たない"とするためのものです。加えて、同様の操作後に右クリックを行い、Occ(占有率)も2分の1へと変更してください(分子が3回軸や4回軸の上にある場合には、占有率をそれぞれ3分の1や4分の1に変更してください)。 その後、拡張表示を行っていただきますと、6つの水素表示される点は変わりませんが、それぞれが結合することなく表示されます。

Q4 : 帰属不可なQピーク群から、電子密度や空隙サイズを元に分子、特に溶媒分子を特定するにはどのようにすれば良いでしょうか。
A: 本画像はSolvent Maskを掛けた直後のパラメーターです。左からV(ų):Solventmask機能が適用された体積、左側のe-:Solventmask機能によって除外された電子数、V/e-:除外された電子1つあたりの体積 を示しています。 加えて、Content/Asymmetric UnitのEdit部から、溶媒が非対称単位あたり何分子含まれているか(今回はエタノール14分子と仮入力)を入力すると、V/at.:1原子あたりの体積、右側のe-:手入力した溶媒が有する電子数が表示され、妥当な入力値であれば緑色の表記となります。この機能を利用して、結晶溶媒候補の中から妥当なものを検討することは可能です。 ただ、こちらの結果から直接溶媒数を決定するのではなく、別の分析手法から求めた結果を入力し、整合するかを確認する程度の利用に留めて頂ければと思います。

Q5 : Solvent Mask機能のように、水素原子までアサインした後にしか使うことができないコマンドはありますか。
A: Solvent Mask(およびSQUEEZE)は"大きな空隙があり溶媒が上手く精密化できない"場合や”溶媒自身のディスオーダーがひどく精密化できない”場合等に使用する機能です。、実験値である反射強度を人為的に修正し残存電子密度を抑制するのですが、その際に原子表面から1.2 Å以上離れた領域をマスク適用範囲とします。そのため、"水素原子までアサインした後に使用することが必須"という決まりがございます。 加えて、オンデマンド配信第6回の24分50秒付近から紹介をしています”Bad Reflections”機能も同様の注意が必要です。本機能は"実測データから得られた回折強度"と"構造モデルから計算された回折強度"の差異を見ておりますので、構造モデルは最終段階まで組めていることが必要となります。
Q6 : とあるピークについてcheck cifでアラートが出るためomitを実施したが、適切かと思われる"それまでに最適化した構造"が崩れてしいました。omitしているピークはthetaが約1度です、何か対策はありますか。
A: Omitコマンドは便利ですが、等価反射含めて全てを取り除いてしまうため注意が必要な場合がります。 Olex2のBad Reflectionsから一致の悪い反射リストを確認します、確認方法はオンデマンド配信第6回の24分50秒付近から紹介されております。 動画では"omit"をクリックする操作のみ紹介されておりますが、omit部の横に”Edit”が存在する場合は、等価反射な反射がいくつか観測されていることを示しております。 "Edit"をクリックすることで新たに開かれたウィンドウから、他の反射と一致度が悪い反射が存在しないかを確認します。一致度の悪い反射が存在する場合は”+”部を”-”に変更することで、その反射だけを取り除くことが可能です。

Q7 : ToolsのFragmentDBで溶媒分子やイオン等の既知構造を呼び出して配置することができるが、既存のデータベースにない構造を登録するにはどうしたらよいでしょうか。構造モデルをDFT計算などで作成してOlexに読み込ませる方法や、既知のcifファイル等から抜き出してOlex2に読み込ませる方法は有りますか。
A: DFT計算で作成した分子モデルを使用する場合は、最適化後の座標を.xyz形式にて出力してください。 Mercuryを用いる場合は、元となるCIFを開き、該当分子を構成する原子以外を消したのち、xyz形式にてデータを出力してください。 画像のように各元素種に対して番号を付け、原子座標情報を"FRAG 17"と"FEND"で挟んでください。そのテキストをOlex2のGUI上へペーストしますと、該当分子の構造を導入することが可能です。

Q8 : 小さな針状結晶しか形成されない試料で、回折像は非常にきれいに見えているものの、分子全体が分子面に対して数十度傾いた2つのフルディスオーダーがある構造がsolveで表示されました。また、twin解析をすると対角項に-1, 1, 1が出るpsudo-meroheadralがBASF 0.5で存在していました。このような場合、twin lawを入れた状態で、ディスオーダーを力技で解析するしかないのでしょうか。 現状、ディスオーダーのうち片方のpartはモデル化を行うことができているが、もう一つのpartをモデル化すると、モデル全体が発散してしまいます。結晶については、一般的な単結晶XRD装置で測定可能な最小サイズであり、これ以上質の良い結晶は取れないと考えています。
A: 空間群の対称性を下げる対処法をお試しください。一つ目に、現在解析している空間群が対称心あり(例:P2₁/c)と仮定して、対称心なしの空間群(例:Pc)へと変更して解析をお試しください。元の空間群(P2₁/c)では見えていたディスオーダーが対称性を下げた空間群(例:Pc)では解消されることがあります。ディスオーダーが解消されなかった場合は元の空間群で解析するようにしてください。 二つ目に、psudo-merohedralということで、現在の晶系がorthorombicだと仮定して、monoclinicやtriclinicまで晶系を変更し、PmやP2、P1の空間群で解析をお試しください。その後、Platonのnew symや、モデルがある程度構築できた場合にAdd symを実施し、真の空間群が見つかるかお試しください。 また、一般的にShelxLプログラムによるディスオーダーモデルの占有率の精密化の限界は10%です。10%を切る場合はディスオーダーモデルを構築せず、VRFにて対処することをお試しください。
Q9 : 無機クラスターの一部置換構造や多孔性結晶中のフリーな対イオンにおいて、Occupancyを0.1程度の小さな値に設定することに妥当性はありますか。もし小さいOccupancyに問題がある場合、どのような操作をすべきでしょうか。
A: ”10%程度のOccupancy(Occ)”は単結晶構造解析においては判断が難しい数値となりますが、Occの設定に際して、どのような目的を持たれているかによって妥当性は変わるかと思います。 例えば置換構造においては"元素分析等で既に存在比が明確化されており、それに合わせて設定する"という理由であれば妥当かと思いますが、”FVARを用いて2種の比率を求めた結果、片方のOccが10%程度になった”という状況であればあまり妥当性は無いです。そのため、元素分析等ほかの分析手法を併用し確認することが重要となります。 次に多孔性結晶中のフリーな対イオンについて考えます。"この空隙中に数パーセントの対イオンが存在していれば、結晶構造全体として中性となる"といった理由があれば、Occ固定にて何とかモデル化する意味も有るかもしれませんが、"空隙中に重めの残差電子密度が残っていて、対イオンをアサインしてみたらOccが10%程度になった”といった程度の理由であれば、あまり意味はなさないかと思います。 いずれの状況にせよ、10%程度のOccの原子を精度よく精密化することは難しいため、温度因子や残差電子密度のみから判断することは避けたほうが良く、その他の分析手法から得られた結果や、電荷のバランス等を鑑みて検討するのがよろしいかと思います。
Q10 : rigakuの英語版youtubeでhirshfeld atom refinementの紹介を見ました。これは、どのような場合に有効な手法なのでしょうか。例えば、max/min peakが残っている場合や、熱因子がおかしいというalertが出るときに改善することはあるのでしょうか。
A: 我々が通常行う構造解析では、独立原子モデル(IAM)を用います。こちらは計算が速く、通常の結晶構造解析においては十分な精度の解析結果が得られます。一方で、水素の電子に関しては"他の原子との結合電子としての役割"を併せ持つため、その電子が原子核周りに球対象に分布しておらず、結合方向に偏って存在します。そのため、IAMで精密化した水素原子は、親原子との結合距離が過小評価されてしまいます。また異方性変異パラメータ(ADP)に対しても、実際の熱振動の動きと異なり"球対称での近似"を行うため、さらに結合距離が過小評価されてしまう問題があります。 その一方で、Hirshfeld Atom Refinement(HAR)を用いると、通常時の測定と同様の"分解能0.8Åまでの測定データ"から、IAMを用いた解析では難しい水素原子の正確な座標やADPを求めることが可能です。 HARは現在、NoSpherA2という機能としてOlex2に搭載されています。HARの詳細については、リガク社員が執筆しております下記日本結晶学会誌を併せて確認ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/61/2/61_130/_pdf/-char/ja
Q11 : 目的とする化合物からは相互作用していないような距離にある溶媒だけがdisorderしており、PART分け、束縛条件を設定しても収束する気配がない場合はどうしたら良いでしょうか。 solvent maskを使用し、その理由を書くという手法を使って良いのでしょうか。
A: ディスオーダーした溶媒構造の精密化が収束しない原因をまずはご確認ください。"Ctrl+T"で背景に表示された精密化のlogから"Maximum = (Max Shift/Errorの数値) for (収束しない原因と該当する原子)"を確認し、該当原子に対して適切な処理をすることで精密化が収束することがあります。メチル基に付いた水素原子の"tor"(回転)が収束しない場合は、水素を付加するコマンドをAFIX 137からAFIX 33に変更することで、回転角の精密化を行わないようにします。その他に、異方性温度因子にしたことで溶媒の原子モデルがつぶれてしまったり、発散してしまう場合は等方性温度因子のまま精密化をしてください。等方性温度因子での精密化でも難しい場合は、Olex2のToolタブ→Flagment DBから、溶媒の種類を選択し剛体モデルを用いて精密化をする方法があります。溶媒分子と目的分子の相互作用等の議論が必要ない場合にはSolvent maskを使用していただいても問題ありません。CheckCIFによりAlert等で指摘された場合は、ディスオーダーにより分子モデルを構築できなかった旨をVRF等で記述いただければと思います。

Q12 : checkCIFのアラート "Large K Value in the Analysis of Variance"K値とは何の値で、どうしたら小さくできるのでしょうか。
A: K値 は実測の回折強度とモデルから計算された理論強度の一致度をある反射グループごとに評価した値となります。二つの強度は等しいことが望ましいため、理想的なK値はどの反射グループを取っても1に近づきます。一方で、ある反射グループのK値が1から大きく乖離してしまっている場合に、本Alertが生じます。 良くある原因として測定データのクオリティがあげられます。結晶性が悪く高角側の回折強度が著しく弱い場合や、低角側の観測回折強度がサチレーションを起こしている場合、計算された理論強度との大きなズレが生じます。このような場合は、上記問題点を解決しつつ、再測定を行う必要があります。 その他、構造モデル側に問題が生じている場合もございますので、モデルに間違いはないか、ディスオーダーを見落としていないか等を確認いただければと思います。
Q13 : ツインが入った試料で、インコメーシュレートピークが出現する物質の構造解析を行いたいです。ツイン、インコメーシュレートそれぞれはCrysalisで強度抽出できたが、両方が存在する場合の強度抽出プロトコルは実装されていますでしょうか。Data reductionの画面では、どちらかをアクティブにすると、どちらかが非アクティブになってしまいます。
A: 申し訳ございません、CrysAlisProには"ツイン"と"インコメンシュレート"が同時に存在する場合、適切に強度を抽出するプログラムは搭載しておりません。測定試料の準備段階で単結晶をピックアップする、もしくは結晶化の段階で"単結晶として成長させる"よう対応ください。
Q14 : cifファイルについて、出力されたcifファイルは、そのまま論文投稿に利用しても問題ないでしょうか。 私は結晶学の専門家ではなく、結晶を測定・解析できるものの、結晶学的に正しい様式かはわかっていない。cifファイル内に追記するべき内容はなにがあるのか教えてほしいです。 加えて、よくalert AやBの理由説明で追加の記述を行うという話を聞くのですが、どこにどう記述すればいいのかわかっていないため、最低限これだけは追記しなければならないものと併せて教えて欲しいです。また、cifファイルを正しい形式で記述できる機能等があれば教えて下さい。
A: 解析後のCIFをCheckCIFにて確認していただき、Alert等や分子構造に問題がなければ論文投稿に使用する事が可能です。第8回の後半にCheckCIFとVRF(AlertAやBの理由説明)の記述方法について説明がありますので、ご確認ください。
Q15 : 特殊位置の解析について、原子を置いて精密化をすると構造が保てないのですが、どうすれば良いでしょうか。
A: オンデマンド配信第7回の20分45秒付近から特殊位置近傍のディスオーダー解析(Part -1および占有率の設定)について、アセトンを例に紹介していますのでご確認ください。この際、正常な構造が保てない場合には結合距離に関するRestraints(DFIX, DANG, SADI)を用いる必要が生じます。 加えて"特殊位置に乗った原子をPart -1に設定したい"場合は、更なる設定が必要です。その原子の座標を固定しないとRefineをかけた際に構造が壊れてしまうことが有りますため、特殊位置の自由度から固定の必要が生じる座標の頭に"1"を付けてRefineをかけるようにしてください(例:原子がa軸に平行な回転軸上に載っている場合の座標設定:0.3 0.5 0.5 → 0.3 10.5 10.5)。
Q16 : 複数の結合を持っている原子で、熱因子がおかしい場合、周りの原子すべてとrigu simuをかけた方が良いのでしょうか。それとも標準偏差を小さくした方が良いのでしょうか。
A: SHELXでは各原子の異方性温度因子(ADP)を独立して精密化していますが、基本的に結合している原子同士のADPには相関があります。そのため、SIMUやRIGU等の温度因子に関するRestraintsを用いる際には、周りの原子を有る程度巻き込んだ状態で、束縛命令をかけて良いかと思います。それでも問題が残る場合は、標準偏差の値を基準値よりも小さくし、様子を見るようにしてください。
Q17 : P2₁で構造解析を行なった時に、Hooftの値が0.5前後になりました。PLATONチェックで、対称性の高い空間群の可能性が指摘されるが、SHELXTで解析を行うとP2₁で構造が現れてしまいます。また、マニュアルでP2₁/c などに空間群を指定し、SHELXSなどで解析を試みると妥当な構造が得られません。解決法があればご教示下さい。
A: PLATONで対称性の高い空間群が推奨されているにもかかわらず、SHELXTでは対称性の低い空間群が選ばれてしまう際、ディスオーダーの存在が影響し、SHELXTが意図的に対称性の低い空間群を選択している可能性が有ります。 他に、単純に空間群の選択が誤っている可能性もあります。例えば、空間群 P2₁ で解析した際に、類似した形状(コンフォメーション)の分子が独立分子として2分子存在している場合は、より高い対称性をもつ空間群で解析できる可能性があります。 このような場合は、SolveタブにてSHELXTを選択し、"Solution Setting Extra"内の"Options"に、空間群を指定するコマンド"-sP2(1)_c"や、可能性の低い空間群も含めて初期構造の導出を試行する"-a0.9"を入力し、"Solve" を再実行することをお試しください。

その他に、HooftやFlackパラメーターの値が0.5に近い時は測定試料が"ラセミ結晶"である可能性も存在します。P2₁の空間群にて構造解析を実施し、鉛筆マークのアイコンを押すとEditウィンドウが現れます。画像のように"twin"と"basf_0.5"と入力し、Editウィンドウを閉じて"Refine"ボタンを押し、精密化をしてください(アンダーバーは半角スペースを意味しています)。異なるエナンチオマーからなる結晶が反転双晶として存在すると仮定してOlex2で処理が実行されます。twinコマンドは双晶則の指定がない場合は-1 0 0 0 -1 0 0 0 -1がデフォルトになっています。また、basfの値は初期値のため、精密化後に数値が計算されます。

Q18 : Olex2を常に空白状態で開きたいため、[Home]-[Setting]Load last:Load previous structure in Olex2 on startupのチェックを外していますが、Olex2を開くたびに前回の構造・ファイルが表示されてしまいます。どうすれば良いでしょうか。
A: こちらでも同様の現象を確認いたしました、Olex2側のバグかと思われます。
Q19 : 空間群の決定について教えてください。自分の選択した空間群が誤りかどうかを判断するポイントがあれば教えて欲しいです。また、構造がうまく見えない場合には、空間群を変更することで解決する可能性はあるでしょうか。
A: 空間群が誤りかどうかを判断するポイントとして、まずはCheckCIFやOlex2にそれらしきメッセージやAlertが出ていないかを確認してください。その他に、対称心ありとなしの空間群間違えを確認する方法として、"Info"タブの”Reflection statistics”から"Wilson plot"と"Cumulative intensity"をそれぞれ選択してください。Wilson plotではE^2-1の絶対値の値が0.736に近いならば対称心なし、0.968に近いならば対称心ありと判定することができます。Cumulative intensity plotでは対称心あり、なし、なし(twin)のどのプロットに沿っているかを見ることで判断することが可能です。 構造がうまく見えない場合は、晶系を対称性の低いものへ変更し、構造が確認できるか確認し、構造モデルを可能な限り置いたうえでPlatonのAdd symやNew symで正しい空間群を見つけることをお試しください。

Q20 : 錯体化合物でヒドリドが配位子として存在する際、想定位置にQピークは表示されるが、そこに水素を置いて精密化すると上手く解析することができませんでした。やはり水素はX線では厳しいため、中性子線等での測定が必要なのでしょうか。
A: X線は電子によって散乱されるため、電子を1つしか持たない水素原子は、周囲の重原子(遷移金属など)に比べて散乱能が極めて低くなります。そのため、電子密度図上でQピークとして見えても、精密化の段階で負の電子密度が出たり、重原子の強い散乱能に埋もれて位置が正しく決定できなくなる現象が頻繁に起こります。以上の理由から、ご指摘のように水素(あるいは重水素)の位置を正確に決定するには、中性子線回折が最も確実な手法です。 しかしながら、もしX線構造解析のみで進める必要がある場合は、ヒドリド配位子の位置と距離を幾何学的に拘束(AFIX コマンド等)をし、自由変数(座標パラメータ)を減らして精密化を行うことで問題が改善する可能性があります。
Q21 : 双晶の場合、CrysAlisPROのEwald explorer-reciprocal spaceから操作をしているが、merohedralの場合はOlex2上で逆格子を求めて記載する方が良いのでしょうか。 Olex2からTwin lawを指定するケースと、CrysAlisProのEwald Explorerから処理するケースの違いを教えてください。
A: 逆格子ビューワー(Ewald Explorer)で確認した際の見え方を説明します。 Non-merohedral twinの場合は、決定した格子に一致する回折点とは異なる方位で、決定した格子に一致しない回折点についても、層線が見られます。そのため、Ewald ExplorerからTwin処理を行います。
その一方で、Merohedral twinの場合、異なる方位で2つの結晶が接合しているにもかかわらず、回折スポットは完全に重なっており、分離することが出来ません。加えて、Ewald Explorerにて確認しても単結晶のようにしか見えないために、データ処理の段階で双晶であることを見抜くことはできません。そのため、データ処理は通常どおり行い、構造解析の際に、結晶の接合方向を指定する双晶則(Twin law)をPlatonの"Twin Rotation Matrix"機能を用いて確認し、得られた双晶則を用いて解析を行います。
本内容はオンデマンド配信第8回にて詳しく説明をしておりますので、ぜひご視聴ください。
Q22 : 現在解析中の単結晶について、C-H結合とC-F結合が結晶中のディスオーダーとして、おそらく7:3くらいの占有率で存在しています。しかし、C-F結合に重なるようにC-H結合を手動アサインしてパート分けを行い、結合長と結合角の束縛をかけた後にRefineをしてみたが、水素原子の位置が少しC-F結合上から少しずれ、一部フッ素原子の楕円体の形がつぶれたような形になってしまいました。どのように解析すればこの問題は解決するのか教えてください。ちなみに、水素をアサインせずにフッ素の占有率だけ0.3くらいに下げれば、R1が4%、wR2が14%、GOFが1.16くらいのデータにはなります。
A: データを見てみないと根本的な原因はわかりませんが、確認いただきたい点は"C-HのアサインにAFIX命令を使用しているかどうか"です。もし使用されていないようでしたら、結合様式に合わせたAFIX命令にてC-H結合側のモデルを固定し、再精密化を行ってみてください。それでも解決できない場合は「リガク 専門家に相談する」から再度ご相談ください。
Q23 : 結晶の外形補正を行いたい場合にループと重なったりして、結晶の形がよく分からないような場合はどのようにすればよいでしょうか。
A: CrysAlisProの"Crystal"タブ右側の矢印から"Show crystal movie"を開き、結晶外形を確認する画面を開きます。下にある"Inverted video image"にチェックを付けると色が反転します。反転することで結晶が見えてくることもございますため、お試しください。

Q24 : Zプライムを求めるところで出てきた、非対称単位のみを表示させる”fuse”機能は、どのように行えば良いのでしょうか。
A: 講演中に紹介した方法は、Olex2のGUI上に"fuse"と直接入力し、Enterを押す方法です。 その他にも下記方法からも実行可能です。
① Olex2のViewタブを開いてください。
② Synmmetry Generationタブ中のSymmetry Toolsを開いてください。
③ Fuseボタンをクリックすることで、GUIに入力した再度同様の機能を実行可能です。


Q25 : disorder処理をした後、解析の都合でH原子が置けない場合がありますが、組成式のH原子の数をあわせることは可能でしょうか。
A: CIFから直接組成式を記入するようにしてください。水素がないことや組成に関するAlertが出た際はディスオーダーが原因で水素原子を付加することができない旨をVRFにて記述ください。ディスオーダー解析の際に水素原子が置けない場合は、PART命令が間違っているケースがあります。念のためPART命令をご確認ください。
Q26 : 分子量数千程度の分子の初期構造が決まらないため、分子置換法を検討したいが、olex2でも分子置換法の実施は可能でしょうか。
A: 蛋白質の構造解析に使用する分子置換法を指している場合、Olex2で分子置換法を実施することはできません。
Q27 : スライドでも紹介されていた「双晶」という言葉について。結晶学的に厳密な「双晶」と結晶構造解析の処理上の「双晶」で定義が違うのかなと思いました、もう少し詳しく説明してほしいです。結晶学的には双晶ではないNon-specific clustersも、CAPやOlex2等のメニューでは便宜上双晶として扱っているのかなと思っています。
A: 結晶学における"双晶"は、日本式双晶(水晶)に代表されるように、ある特定の結晶学的方位に従って接合している結晶を指します。 その一方で単結晶構造解析の分野では"双晶"という言葉を、"二つ以上の異なる方位を有する単結晶が同時に存在している状態"といった広義な意味で使用することが多いです。そのため、結晶成長の過程で接合した日本式双晶も、たまたま二つ以上の単結晶が貼り合わさった多結晶も、ヒビ等が原因で単結晶に2つのドメインが生じた場合も、"双晶"と呼ぶことがございます。
Q28 : numericalの吸収補正をしたデータを使って解析する場合、どのファイルを使えばよいか。defaltではempericalの補正をおこなったデータが使われていると認識しています。
A: empirical吸収補正とNumerical吸収補正がされたデータが最初から分かれて存在しているわけではありません。Finalize画面にてNumerical吸収補正を実施し、出力されたファイルを用いて解析を実施するようにしてください。Numerical吸収補正をするには結晶外形、組成、Z値が分かっている必要がある点にご注意ください。Finalizeについては第4回の後半をご覧ください。
Q29 : "Absolute structure cannot be determined reliably" この表示が出る場合、再度結晶作成が必要でしょうか。炭素・酸素・水素からなる合成化合物で、表示されている立体構造は間違いないと考えています。デフォルトモードで測定していますが、他のモードで測定したほうが良いなどあれば教えてください。
A: こちらは"絶対構造の決定に十分なデータクオリティではない"ことを注意喚起するアラートです。 単結晶X線構造解析より絶対構造を決定したい場合は、測定条件を変更して再測定を行う必要があります。 オンデマンド配信第3回にて紹介しておりますストラテジーパラメーターの設定時に、フリーデル対の平均化に関するチェックボックスをオフにし、測定条件を再計算させたうえで測定を行うようにしてください(29分25秒付近を参照)。 酸素以下の原子番号の原子のみからなる結晶の場合は異常分散の効果が小さく絶対構造が決まりにくい場合があるため、Cu線源を使用した上でredundancyが10程度になるようにストラテジーを組むことをお勧めします。 もし、絶対構造既知の分子と複合結晶を作った場合や、合成過程にて絶対配置が決定している場合は、Flackパラメーターが必ずしも規定値以内に入っている必要はありません。その場合はReportタブ下部の"Absolute structure determination"項目で、該当する絶対構造決定法を選択し、"MergeCIF"ボタンからCIFを生成してください。
Q30 : Data reduction with optionsのstep3: Basic algorithm parametersのところで、clear data from previous runとclear all data from tmp と2つ出てきますが、これらはどのような効果があるのでしょうか。どちらもClearとすべきでしょうか。
A: Clear data from previous run:前回のreduction情報(peak profile、integration results等)が消去されます。
Clear all data from tmp:バックグラウンドを含むreduction情報(tmp)が全て消去されます。
どちらのアイコンもクリックして、消去することを推奨しております。
Q31 : 背景のログを下の一部にだけ表示させたいです、方法を教えてください。
A: ① Olex2のHomeタブを開いてください。
② Homeタブ中のSettingsタブを開いてください。
③ Console Lines部の右側のブルダウンから、ログの表示行数を変更することが可能です。
