電池材料開発
固相法を用いた材料合成は、原料を均一に混合・粉砕し、焼成するプロセスが一般的です。
原料や合成物のチェックに、よくXRDやXRFが使用されます。
電池材料の評価アプリケーション
1. 気密試料ホルダーを用いた固体電解質LPSの測定
固体電解質Li7P3S11,(LPS) は、大気中の水と反応しやすいことが知られています。試料を大気に曝さずに測定できる気密試料ホルダーを用いることで、4日間経過しても大気中の水の影響を受けずにLPSのX線回折(XRD)パターンを取得することができました。
図.気密試料ホルダーの気密試験
図.気密試料ホルダーの使い方紹介
2. 正極材NMCの主成分分析
正極材料の組成管理を酸分解等の試料処理なしに、非破壊で簡便に行うことが出来ます。SQX分析(スタンダードレスFP法)で得られたLi(Ni,Co,Al)O2,(NCA)およびLi(Ni,Co,Mn)O2,(NCM) の主成分の組成比を示します。ICPと同程度の結果が得られました。
また波長分散型蛍光X線法(WDX)はピーク分離が良いため、エネルギー分散型蛍光X線法(EDX)では分離困難なNCM中の微量Fe不純物の検出が可能です。
表. 化学組成LiMxO2におけるx値
図.WDXでの蛍光X線スペクトル
3.正極材NMC焼成時の相変化挙動の確認
試料を昇温させながらXRDを測定することで、固相法で正極材を焼成する過程を詳細に調べることができます。Li(Ni,Co,Mn)O2, (NCM)の原材料粉末を混合し、昇温したところ1000℃で目的の結晶相由来のピークが観測され、室温に戻しても分解していないことが分かりました。
図. 各温度におけるXRDプロファイル
4. 正極NMCに含まれる不純結晶相分析
合成したNMCに含まれる遷移金属元素は、一般的にプロファイル中のBG成分に寄与し、P/B比やS/N比を低下させます。そのため、微量の不純物ピークを確認する場合は、BG成分を除去する必要があります。XSPA-400 ER検出器は、エネルギー分解能が高い2次元検出器のため、BG成分を除去し、微量成分を明瞭に観測できます。測定の結果、原料成分のLi2(CO3)が0.5wt%残存していました。
図.XSPA-400の写真(左) XSPA-400 ERで測定したXRDプロファイル(右)
5. 負極材Siの不純物分析
負極材Siはウエーハ屑からリサイクルされることがあり、不純物の分析が重要となっています。電極グレードSi中の不純物成分Al、Fe、Caのスペクトルおよび分析結果を示します。波長分散型蛍光X線法はAl由来の単独ピークが得られるため、微量Al成分が検出可能です。エネルギー分散型蛍光X線法ではSiとのピーク重なりのため、微量のAl成分が検出困難な場合があります。
表. Si負極中の不純物元素の濃度(ppm) 図. WDXでの蛍光X線スペクトル(左) EDXでの蛍光X線スペクトル(右)
6. 負極材Siの結晶子径および粒子径解析
負極材Siは、電池の耐久性を向上させるために粒子径を数10 nm以下に制御する必要があると言われており、XRDから結晶子径を、SAXSから粒子径を求めることが可能です。測定の結果、Siの1次粒子径は結晶子径に等しく、かつ凝集した2次粒子も存在していることが示唆されました。
図.XRDプロファイル(左上)、SAXSプロファイル(右上)、XRDとSAXSから得られた平均サイズ(左下)、1次粒子と2次粒子の概略図(右下)