世界のリガク vol.7

はじめてのデンバー展
こんにちは。アプリケーションラボの濱田と申します。私は8月に、アメリカ・メリーランド州のロックビルで開催された「Denver X-ray Conference(DXC)」に参加してきました。X線分析分野では世界的に有名な学会で、来年で75周年を迎えます。会場には世界中から研究者や企業が集まり、最新の研究成果や装置が紹介され、まさに“X線の祭典”といった雰囲気でした。
アメリカの学会は、日本と比べると全体的にとてもフランク。発表の合間にも立ち話が弾み、研究者同士が自然に交流できる空気がありました。特に環境問題やリサイクルに関するセッションは立ち見が出るほど盛況で、欧米での注目度の高さを肌で感じました。
リガクから参加したメンバーと、ウェルカムゲートの前で。右から2番目が濱田さん。
技術トレンドとサステナブルニーズ
研究発表を聞いて強く印象に残ったのは「その場測定(in-situ)」の広がりです。例えば、材料に温度をかけながら相転移を観察したり、電池の充放電過程をリアルタイムで追跡したりする研究が数多く発表されていました。日本でも注目されていますが、欧米では産学両方の分野でさらに積極的に進められており、実用化に近づいている印象を受けました。
また、ナノプラスチックやリサイクル材料の分析も大きなテーマでした。環境や健康への影響を解明する研究は、日本以上に社会的関心が高く、学会全体の大きな潮流となっています。
さらに、ラボの自動化やAI解析も多くの発表で取り上げられていました。自動サンプルチェンジャーや高速測定といった技術に加え、AIを活用したパターン認識や構造解析など、「研究効率をどう高めるか」という観点での取り組みが進んでいます。こうした流れは今後、日本の研究現場にも確実に広がっていくと思います。
空き時間に街を散策。ユニクロを発見!
ポスター発表 — 温度変化測定
私は今回、最新の広角X線散乱装置(DicifferX WAXS Edition)を用いた温度変化測定の研究を発表しました。ブースでは 「SmartLabやMiniFlexは知っていたけど 、こんな測定もできるのか!」と驚かれることも多く、実際に研究にどう活かせるかという質問をたくさんいただきました。研究者の方々と直接意見交換ができるのは、やはり学会ならではの醍醐味ですね。
ポスターを前に、質問を受ける濱田さん。
ちょっとユニークな学会文化
DXCでは、ポスター発表と一緒にレセプションが行われます。夕方になると会場にビールやスナックが並び、参加者がカジュアルに交流する時間が設けられているのです。お酒を片手に研究の話をする光景は、日本の学会ではあまり見られず、とても新鮮でした。
そんなハッピーアワーで、私にはちょっとしたハプニングがありました。ビールを頼むたびに「IDを見せてください」と言われ、滞在中に合計 5回も年齢確認を受けたのです!どうやら未成年か学生だと思われたようで…。
アメリカではアルコール提供の際の年齢確認がとても厳格で、常にパスポートを持ち歩く必要がありました。緊張感のある発表の合間に、こんな出来事もあって、ちょっと和んだ瞬間でした。
ザ・アメリカ!なステーキ。もちろん完食しました。
出張を終えて
今回の学会を通じて、「環境」「エネルギー」「自動化」といったテーマの重要性が、ますます高まっていることを改めて実感しました。また、海外においては、リガクの装置をさらに広く知っていただく必要があるという課題がある一方で、今後ニーズが高まると予想される多くの研究に貢献できる可能性を強く感じました。 学会は研究発表の場であると同時に、文化や人との交流を通じて新しい刺激をもらえる場でもあります。今回の経験を、これからの活動に活かしていきたいと思います。
ポスターの前で。研究に対する激励のメッセージもいただけました。

濱田 佳穂 (Kaho Hamada)
アプリケーションラボ XRD分析グループ
大学・大学院では物理化学を専攻し、セルロースの溶解に関する研究に取り組んでいました。簡単に言い換えると、「割り箸をどうやったら簡単に溶かせるか」というテーマです。 リガク入社後は1年間の社内研修を経て、現在はアプリケーションラボに所属しています。
X線回折装置を中心に、「マーケティング支援」「販売支援」「開発支援」「お客様支援」の4つの柱で業務を行っており、特に高分子材料に関するアプリケーション開発・市場調査を多く担当しています。 展示会のブース取りまとめや、社内外向けウェビナー・講習会での講師登壇を通じて、技術情報の発信にも取り組んでいます。X線回折装置を通じて、研究者・技術者の課題解決に貢献できることに、大きなやりがいを感じています。