NEX CG II を用いた ガソリン中マンガン(Mn)の分析
はじめに
メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル(MMTまたはMCMT)は、四エチル鉛(TEL)に代わり、オクタン価を高めるために自動車用ガソリンおよび航空機用ガソリンに添加されるアンチノック剤として世界の多くの地域で使用されています。自動車用ガソリン中のマンガン(Mn)含有量は、通常50~500 mg/kgですが、航空機用ガソリンでは3000 mg/kg(約3g/L)にも達します。ガソリン中のMn含有量を確実に把握することで、エンジンの圧縮比やその他の幾何学的・機械的な運転条件に基づく最適なエンジン性能を確保することができます。偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX CG II(ネックス・シージーツー)は、単純な操作で簡単にガソリン中の微量Mnの分析が可能です。特別な試料処理や調製、及び技術的な知識の必要なく迅速に結果を得ることができます。
今回は、ASTM D5059 Test Method Dに準拠した、ガソリン中Mnの分析について紹介します。
試料調製
試料は、軽く振とうし、気泡が消失した後、試料セルに4 g投入して測定に供しました。試料セルはポリエチレン試料容器(Cat.No.515197)を、試料フィルムは酸素を含むガソリンに対して耐性があるEtnom® フィルム(厚み3μm)を使用しました。試料セルの蓋は、蒸気圧がかからないように小さな穴で通気性を確保しました。また、ガソリンは蒸発速度が速いため、試料調製が終わったらすぐに測定し、測定が完了したらすぐに試料を試料室から取り出します。
表1 NEX CG IIの仕様と測定条件
分析結果
(1) ガソリン中マンガン(Mn)の定量分析
市販のMn添加物を含むガソリン標準試料3点を用いて検量線を作成しました。試料の「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表2、相関図を図1に示します。本稿では、検量線範囲を25~100 mg/kgとしていますが、適切な標準試料を追加することで、希望するMn濃度範囲を拡張することが可能です。また、高い分析精度や、低い検出下限での分析を必要としない場合は、測定時間を短縮することができます。
表2 ガソリン中Mnの分析結果 (単位:mg/kg)
図1 マンガンの標準値と測定値の相関図
(2)ガソリン中Mn分析の再現性確認結果
繰り返し再現性を確認するために、標準試料2点につきまして単純10回繰り返し測定を行いました。得られた再現性確認結果を表3に示します。このときの1回あたりの分析時間は300秒としています。いずれも変動係数が0.4 %と、非常に良好な再現性が得られています。
表3 ガソリン中Mnの再現性確認結果
(3)ガソリン中Mn分析の検出下限(LLD)
作成した検量線により、ガソリン中Mnの検出下限(LLD)を求めました。検出下限は、Mnを含まないブランクのガソリン試料に対して単純10回繰り返し測定を行い、得られた標準偏差の3倍(3σ)で計算しています。ここでは、100秒と300秒の測定時間における、LLDを示しています。測定時間300秒の場合0.06 mg/kgと、非常に優れた検出下限値が得られています。
表4 検出下限(LLD)
まとめ
NEX CG IIを用いて、ASTM D5059 Test Method Dに準拠した、ガソリン中の微量マンガン(Mn)分析が簡便・迅速に行えることを確認しました。NEX CG IIは高精度な分析ができ、現場でのスクリーニング分析に加え、製品の品質保証、品質管理分析にも対応できる非常に有用な装置です。