NEX DE による 金鉱石抽出液中の金(Au)の分析
はじめに
金鉱石採掘では、通常、シアン化物への浸出技術を用いて微量の金含有物を回収します。鉱石から溶出した金は、CIP(Carbon- in-Pulp)、CIL(Carbon-in-Leach)、CC(Carbon Column)などの手法で活性炭に吸収されます。その後、金は加熱したシアン溶液によって炭素から溶離され、電気分解によって回収されます。この抽出液中の金濃度についてその場分析を行うことで、オペレータは濃度低下のタイミングを迅速かつ容易に判断し、プラントの効率を大幅に改善することができます。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX DE(ネックス・ディーイー)は、シンプルな操作で簡単に溶出液のその場分析が可能です。特別な試料処理や調製、技術的な知識の必要なく最速1分程度で結果を得ることができます。
今回は、金を溶離した抽出液のその場分析について紹介します。
試料調製
試料は、そのまま試料セルに6 g投入して測定に供しました。試料セルはポリエチレン試料容器(Cat.No. CH1330)を、試料フィルムは腐食性物質に対して優れた耐薬品性を持つポリイミドフィルム(Cat.No. RS1440-K100、厚さ7.5 m)を使用しました。シアン化合物などの金溶出液は腐食性があるため、試料調製が終わったらすぐに測定し、測定が完了したらすぐに試料を試料室から取り出します。
装置および測定条件
NEX DEの仕様と測定条件を表1に示します。
表1 NEX DEの仕様と測定条件
NEX DEはコンパクトボディの汎用型EDX装置で、リガクのEDX用ソフトウェア QuantEZ を搭載しており、簡単に操作を行うことができます。AC100V電源のみで稼働し,特別なガスや冷却水は不要です。また、標準付属の15試料自動交換機(図1)により効率よく試料を測定することができます。
図1 15試料自動試料交換機
分析結果
(1) 金抽出液中金(Au)の定量分析
原子吸光法で値付けした標準試料5点を用いて検量線を作成しました。試料の「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表2、相関図を図2に示します。
表2 抽出液金の分析結果
図2 金の標準値と測定値の相関図
また、繰り返し再現性を確認するために、標準試料2点の単純10回繰り返し測定により得られた再現性確認結果を表3にまとめます。いずれも標準偏差が0.1 ppm以下と、非常に良好な再現性が得られています。
表3 金抽出液試料分析時の再現性確認結果
(2) 金抽出液中金の検出下限(LLD)
作成した検量線による金抽出液中金の検出下限(LLD)を求めました。検出下限は、ブランク試料(純水)について単純10回繰り返し測定を行い、得られた標準偏差の3倍(3σ)で計算しています。表4より、検出下限は300秒測定の場合はおよそ0.3 ppm、100秒測定の場合はおよそ0.5 ppmとなります。
表4 金の検出下限(LLD)
まとめ
NEX DEを用いて金抽出液に含まれる金の分析を簡便・迅速に行えることを確認しました。NEX DEは小型サイズながらも安定で高精度な分析ができ、鉱石、尾鉱およびスラグ処理時に生じる抽出溶液中の金濃度をモニタリングする際に最適な装置です。