NEX QC、NEX QC+による アルミ板上のジルコニウム(Zr)化成処理皮膜の分析
はじめに
多くのアルミ板や鋼板は、酸化や腐食を防止する為、表面保護のための化成処理が施され、表面が不動態化します。化成処理皮膜には、手法により異なりますがCr、Ti、V、Mn、Ni、Zrなどが含まれます。また、切削工具やプレス機の磨耗を最小限にするために、雨風に曝される場所で利用されるアルミ材に、この化成処理が施されます。鋼板につきましても、屋外の小屋などの風化しやすい場所で利用されています。化成処理皮膜は製品に施された塗装の保持効果もあります。エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX QC(ネックス・キューシー)およびNEX QC+(ネックス・キューシー・プラス)は単純な操作で簡単に各種化成処理皮膜の付着量分析ができ、低コストで信頼性の高い品質管理を行うことができます。
今回はNEX QCおよびNEX QC+によるアルミ板上のジルコニウム化成処理皮膜の付着量分析について紹介します。
図1 NEX QC
分析結果
標準物質6点を用いてジルコニウム付着量の検量線を作成しました。試料の「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表1、表2に、相関図を図2、図3に示します。この検量線では、化成処理前のブランク試料のバックグラウンド強度を用いた補正を行っております。NEX QC、NEX QC+とも良好な結果が得られています。
表1 Zr付着量の分析結果(NEX QC)
図2 Zr付着量の標準値と測定値の相関図(NEX QC)
表2 Zr付着量の分析結果(NEX QC+)
図3 Zr付着量の標準値と測定値の相関図(NEX QC+)
標準物質のうち2点について、単純10回繰り返し測定を行い、再現性を確認した結果を表3にまとめます。2機種とも優れた再現性を示していることがわかります。
表3 Zr付着量分析の再現性確認結果
(a) NEX QC
(b) NEX QC+
サンプル表面と位置決め
アルミニウムは、製品に美的外観や物理的特性を与えるために、さまざまなパターンで表面処理されることがあります。表面仕上げ技術によって、アルミニウムを滑らかなままにすることや、方向性のある粒子パターンを備えたもの、ハッチングまたはその他のパターンにすることができます。今回のアルミ板試料は、木目柄の試料を用いています。このような試料の場合、表面の凹凸によりX線強度が変化しますので、柄の方向とX線照射方向を合わせて測定を行いました。
まとめ
NEX QC、NEX QC+を用いてアルミ板上のジルコニウム化成処理皮膜のジルコニウム付着量分析を簡便・迅速に行えることを確認しました。これらの装置は、ともに小型サイズながらも低コストで高精度な皮膜の付着量管理分析が可能です。