NEX QC による RPF・プラスチック中の塩素(Cl)の分析

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はじめに

廃棄物由来の紙やプラスチックなどを固形化して作成される固 形燃料RPF(Refuse Paper & Plastics Fuel)は、リサイクル燃料として近年注目されています。塩素はポリ塩化ビニルなど塩素系プラスチックとして廃プラスチック中に含まれることがあります。燃焼の際に塩素(Cl)が含まれると付帯設備の腐食だけでなく環境汚染も引き起こします。

このためRPFでは全塩素量が管理され ており、塩素量が低いもの、とりわけ0.3mass%以下のものが高 品位品として扱われています。RPF中の塩素量を厳密に管理するには、RPF の状態だけでなく廃プラスチックなどの原料の受け 入れの段階から塩素量を把握することが望まれます。塩素の分析手法として燃焼法が用いられていますが、操作が煩雑で測定できる試料数が限られます。蛍光X線分析法は、試料処理が簡 単で、短時間に多数の試料を分析できるため、RPFや廃プラスチック中の塩素量のスクリーニング分析に適しています。

今回は、簡単にRPF中の塩素分析がおこなえるエネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX QC(ネックス・キューシー)による分析例を紹介します。

 

装置および測定条件

NEX QCの仕様と測定条件を表1 に示します。ヘリウムガスは使用せず、測定は大気雰囲気で行いました。

表1 NEX QC の仕様と測定条件

装置 NEX QC
X 線管 4W Ag ターゲット
検出器 Si-PIN
測定時間 300 秒
測定雰囲気 大気

装置本体にはコンピュータとサーマルプリンタを内蔵しており、測定とデータの出力を一台で行えます。操作はタッチパネル方式で非常に簡単です。自動試料交換機(オプション)により効率よく試料を測定することができます。

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図1 自動試料交換機

分析結果

(1) RPF 中の塩素の分析

検量線法により塩素量が既知の試料2 点を分析した結果を表2にまとめます(全塩素分として燃焼法による分析値を記しています)。試料は適切な大きさに切断しました。

表2 RPF 中の塩素の分析結果 (単位:ppm)

  全塩素分
820 ppm
 全塩素分
1700 ppm
分析値 3570 1700

燃焼法の値と差はありますが、試料の不均一さを考慮するとスクリーニング分析としては問題ない範囲といえます。

 

(2) プラスチック中の塩素の分析

段階的に塩素を含有するポリエチレンの標準試料(板状)により検量線を作成しました。試料はそのままの状態で測定しました。「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表3 に、相関図を図2 に示します。

表3 ポリエチレン中の塩素の分析結果

試料No.   標準値 測定値
1 42 43
2 86 88
3 220 214
4 430 433
5 1200 1200

 

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図2 標準値と測定値の相関図

標準試料の中から抜粋した塩素含有率42 ppm(0.0042mass%)、及び1200 ppm(0.12 mass%)の10 回繰り返し測定により得られた再現性確認結果を表4 にまとめます。

表4 再現性確認結果

  標準値
42 ppm
標準値
1200 ppm
平均値 45 1202
標準偏差 4 4
変動係数(%) 10 0.3

 

(3) 検出下限

測定時間100 秒、及び300 秒における塩素の検出下限を表5にまとめます。検出下限は塩素を含まない純粋なポリエチレン標準物質の10回繰り返し測定により得られた標準偏差の3 倍としました。

表5 検出下限

100 秒測定 300 秒測定
11 ppm 6 ppm

 

まとめ

NEX QCを用いてRPF 及びポリエチレン中の塩素の分析を行い、数十ppmという微量な塩素に対しても安定した分析値が得られることを示しました。検出下限は100 秒測定で11 ppm、300秒測定では6 ppm と非常に良好で、数百ppm 以上を閾値としたスクリーニングであれば更に短時間でも分析が可能です。

RPF 及びプラスチック中の塩素を分析する上で、NEX QC は小型サイズながらも高精度な分析ができ、測定に際してはヘリウムガスや液体窒素を必要とせず、低いコストで分析できる非常に有用な装置です。

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