NEX QC による 軽油中の硫黄(S)の分析
はじめに
硫黄(S)は原油中に多く含まれており、石油製品にも硫黄は残留します。これらを大気中で燃焼などすることで、硫黄が環境汚染を引き起こすため、原油や重油、軽油、ガソリン、灯油などの石油製品に対して世界中で硫黄の許容量が規制されています。硫黄含有率が品質や価格の指標となるため、簡単でかつ正確に硫黄を分析することは非常に重要視されています。今回は、簡単に原油や石油製品中の硫黄分析ができるエネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX QC(ネックス・キューシー)による分析例を紹介します。エネルギー分散型蛍光X線分析装置による原油及び石油製品中の硫黄分析については「JIS K 2541-4 :2003 原油及び石油製品-硫黄分試験方法 第4部:放射線式励起法」にも記載されている確立された手法です。
試料調製
試料はサンプル瓶の中で振り混ぜた後、Chemplex社製試料容器(Cat.No.CH2131)に試料を5 g充填し、測定しました。試料フィルムはChemplex社製 厚さ4mのプロレンフィルム(Cat.No.CH416)を使用しました。
図1 Chemplex社製試料容器
装置および測定条件
NEX QCの仕様と測定条件を表1に示します。ヘリウムガスは使用せず、測定は大気雰囲気で行いました。
表1 NEX QCの仕様と測定条件
装置本体にはコンピュータとサーマルプリンタを内蔵しており、測定とデータの出力を一台でおこなえます。操作はタッチパネル方式で非常に簡単です。自動試料交換機(オプション)により効率よく試料を測定することができます。
図2 自動試料交換機
分析結果
(1) 軽油中の硫黄の分析
軽油の認証標準物質(ANALYTICAL SERVICES,INC.製)により検量線を作成しました。「認証値」と作成した検量線による「測定値」を表2、相関図を図2に示します。
表2 軽油の硫黄の分析結果
図2 認証値と測定値の相関図
標準物質の中から抜粋した硫黄含有率100 ppm(0.01 mass%)、及び1000 ppm(0.1 mass%)の10回繰り返し測定により得られた再現性確認結果を表4にまとめます。
表3 再現性確認結果
(2) 検出下限
測定時間120秒、及び600秒における硫黄の検出下限を表4にまとめます。
検出下限は硫黄を含まない軽油標準物質(S<0.1 ppm)の10回繰り返し測定により得られた標準偏差の3倍としました。
表4 検出下限
まとめ
NEX QCを用いて軽油中の硫黄の分析をおこない、非常に安定した分析値が得られることを示しました。ここで得られた結果は、JIS K 2541-4 :2003 原油及び石油製品-硫黄分試験方法 第4部:放射線式励起法が求める連続測定誤差(0.01+0.01S mass%以下、S :硫黄分値)を十分満たしています。
軽油中の硫黄を分析する上で、NEX QCは小型サイズながらも高精度な分析ができ、測定に際してはヘリウムガスや液体窒素を必要とせず、低いコストで分析できる非常に有用な装置です。