Supermini200によるガラス原料の半定量分析

Application Note XRF1059

はじめに

ガラスは物理的に強固かつ光学的には透明という特長を持った物質で,日用品から航空宇宙開発のようなハイテク分野まで非常に幅広い分野に応用されています.ガラスの主成分はSiO2であり,含まれる他の成分はガラスの特性に直接的な影響を与えます.例えば,Na2Oはガラスの軟化点を下げますが,過剰に加えると,物理的にも化学的にも耐久性が損なわれます.また,Fe2O3は多くの場合ガラス原料に含まれますが,ガラスの色や透明度に大きな影響を与える成分です.したがって,ガラスの最終製品に所定の特長を持たせるためには,製造段階における原料の主成分及び副成分の含有量を注意深く管理することが重要です.

蛍光X線分析法は,原料の組成を素早く簡単に同定し,正確な元素分析結果を得ることができる分析手法です.リガクの半定量分析プログラム「SQX」は,ファンダメンタル・パラメーター(FP)法を用いた理論計算と装置内蔵の感度ライブラリとから標準試料を準備することなしに含有率を算出します.含有率計算は定性スキャン測定結果に基づいて行われます.

このアプリケーションノートでは,ガラス原料の硅砂及び長石を,簡単な試料処理と操作で半定量分析した結果について紹介します.これらの天然原料は一般に粒度及び鉱物学的不均一性を持つため,半定量分析結果の正確さが損なわれる可能性があります.SQX分析は,この問題を解消するために,不均一な試料性状に合わせた感度ライブラリを追加登録して分析結果を計算し正確さを改善することができる,「マッチングライブラリ」という特長的な機能を備えています.

装置

Supermini200は,卓上走査型の波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)です.高いスペクトル分解能,軽元素の感度といった波長分散型の優れた特長を備えながら,冷却水,特別な電源設備などのユーティリティが不要で,設置面積も小さくなるよう設計されています.標準のガスフロー型検出器(F-PC)をオプションのシールド型検出器(S-PC)に換えると検出器用ガス(PRガス)の準備も不要となり,まさしくユーティリティフリーのWDXRF装置となります.

Supermini200は高感度な200W空冷X線管,二つの検出器,真空/ヘリウム雰囲気切換プログラム制御,最大で三つの分光結晶等を備え,酸素からウランまでの元素分析が可能です.

Supermini200のソフトウェアは,リガクの汎用高出力型WDXRFであるZSXシリーズと共通の,Windows®ベースのソフトウェアであり,先進的なアルゴリズム,多言語サポート及び使いやすいインターフェースを備えています。

試料調製

本分析では,XRF分析で最も簡単な試料処理方法であるルースパウダー法を用いています.4.0 μm Prolene® フィルム(Cat.No. CH416)を張った試料容器(Cat.No. CH1540) に乾燥した微粉末試料4.0 gを入れました.試料容器は安価な使い捨てタイプです.

SQX分析には下記の認証標準物質を用いました.

 長石

  • GSJ JF-1 (産業技術総合研究所地質調査総合センター)

 

硅砂 (高純度及び低純度)

  • JCRM R401 (日本セラミックス協会)
  • JCRM R403 (日本セラミックス協会)

 測定

測定はSupermini200を用い,ナトリウムからウランまでの範囲について定性・SQX分析を行いました.測定にあたり定角測定機能をNa, Mg, Al, K, Ca, Ti,Feの強度測定に適用しました.これは,2θスキャン後にピーク及びバックグラウンドのX線強度をユーザーが指定した時間だけ再測定する機能で,計数の統計誤差を劇的に低減できるため,特に微量元素の精度向上に有効です.定角測定を適用した際にはソフトウェアが自動的にピーク及びバックグラウンドの最適角度を決めますので,正確なネット強度が得られます.

ナトリウムからウランまでの全スキャンの後,検出された元素とそのX線強度を用いて半定量FP計算が自動的に実行され,分析結果が出力されます.

図 1 定性チャート例 (GSJ JF-1)

分析結果

表1及び表2に測定試料の認証値とSQX分析結果を示します.SQX分析結果は認証値とよく一致しています.また,表1及び表2は,標準ライブラリのみを用いて得られた分析結果と,マッチングライブラリを標準ライブラリに追加して得られた分析結果の比較も併せて示しています.表1及び表2のマッチングライブラリによる分析結果は,軽元素で特に改善されていることを示しています.これは,粉末試料では一般的に,重元素に比べて軽元素に対する粒度及び鉱物学的不均一性の影響が大きいためです.マッチングライブラリ機能はSQX分析における不均一効果を補正し正確さを改善するのに有効です.また,半定量計算に際し,未知試料の濃度及び性状が最も近い参照試料を自動検索することも可能です.

 

 

結論

ルースパウダー法を用いたWDXRFによる半定量分析は,未知試料の化学組成が迅速に得られる方法です.200W空冷X線管を搭載したSupermini200による測定で,良好な分析結果が得られました.

SQXプログラムの数ある特長の一つがマッチングライブラリ機能です.この機能は分析結果の正確さを改善することができ,鉱物・岩石試料といった地質系試料の幅広いスクリーニング分析に利用可能です.

Supermini200は設置面積の小さい卓上型装置で家庭用と同じ100V電源があれば動作します.Supermini200は特別なユーティリティが不要で場所を選ばない装置のため,どこでも設置できるという大きな利点があり,採鉱現場の小規模分析室などでの利用にも適しています.

 

表 1 長石 GSJ JF-1の分析結果(単位:mass%)

組成/元素

認証値

SQX分析値

(マッチングライブラリ無し)

SQX 分析値(マッチングライブラリ有り)

Na2O

3.37

3.9

3.4

MgO

0.006

N.D.

N.D.

Al2O3

18.08

19.8

18.3

SiO2

66.69

64.0

66.9

P2O5

0.01

0.015

0.014

K2O

9.99

10.9

10.0

CaO

0.93

1.0

1.0

TiO2

0.005

0.008

0.005

Cr2O3

-

0.017

0.015

Fe2O3

0.06

0.099

0.070

Rb

0.0266

0.032

0.026

Sr

0.0172

0.019

0.017

Zr

0.00386

0.004

0.003

Ba

0.1750

0.20

0.18

表 1 長石 GSJ JF-1の分析結果(単位:mass%)

 

 

R401 (高純度)

R403 (低純度)

 

認証値

SQX 分析値

(マッチングライブラリ無し)

SQX 分析値

(マッチングライブラリ有り)

認証値

SQX 分析値

(マッチングライブラリ無し)

SQX 分析値

(マッチングライブラリ有り)

Na2O

0.01

N.D.

N.D.

0.33

0.45

0.33

MgO

-

0.040

0.038

-

N.D.

N.D.

Al2O3

0.45

0.96

0.44

2.58

2.9

2.6

SiO2

99.4

98.9

99.5

95.1

94.5

95.3

SO3

-

N.D.

N.D.

-

0.022

0.019

K2O

<0.01

0.012

0.009

1.5

1.8

1.5

CaO

-

N.D.

N.D.

-

0.12

0.11

TiO2

0.02

0.025

0.024

0.04

0.043

0.043

Fe2O3

0.012

0.023

0.015

0.10

0.11

0.10

Rb

-

N.D.

N.D.

-

0.011

0.010

Y

-

N.D.

N.D.

-

0.002

0.002

Zr

-

0.004

0.003

-

0.021

0.018

 

表 2 硅砂 JCRM R401 及び R403の分析結果(単位:mass%)

 

 

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