高分子物質の熱分解により生成する 混合有機化合物ガスをリアルタイムに弁別分析
何がわかるのか?
TG-DTA-MSのガス検出器に光イオン化質量分析計を用いた示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置(ThermoMass Photo)は、検出ガス分子を壊さずそのまま分子イオン状態で計測できる大きな特徴をもっています。これにより、加熱時に複数発生した有機ガス成分を分子イオン毎に認識可能になります。今まで不連続的に発生ガスを採取してGC/MSで分離しなくてはならなかった測定を温度関数として連続的に成分弁別できます。[1]
測定・解析例
ナイロンMXD6は、主鎖中に芳香族環を有する脂肪族ポリアミドです。ナイロンMXD6のTG-DTA-EIMS(EI:電子衝撃イオン化法)とTG-DTA-PIMS(PI:光イオン化法)の測定結果の比較を図1に示します。従来のTG-DTA-MS(EIMS)で観測されるガスの質量スペクトルは、m/zの低い領域に数多くの解裂イオンが互いに重なり合うため発生ガスを特定することは困難です。一方、TG-DTA-PIMSでは光ソフトイオン化の効果により解裂イオンを生じさることなく発生ガス種を特徴付ける分子イオンのみから構成されます。この単純化された質量スペクトルによって発生ガスの解析が容易となります。この結果、ナイロンMXD6の熱分解主成分がシクロペンタノン(m/z 84)とキシレン(m/z 106)であることが容易に分ります。
図 1 ナイロン MXD6 の TG-DTA-EIMS と TG-DTA-PIMS の比較
参考文献:[1] T.Arii, S.Otake, Y.Takata, S.Matsuura, “Evolved Gas Analysis using Photoionization Mass Spectrometry” J. Mass Spectrum. Soc. Jpn., 54, 243-249 (2006).
推奨装置:示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定システム ThermoMass Photo
昇温脱離ガス光イオン化質量分析装置 TPD type R Photo