熱分解からナイロンの種類を迅速に識別分析
何がわかるのか?
ナイロンは、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた脂肪族骨格を含むポリアミドです。
類似構造をもつ代表的な3種類のナイロン樹脂の熱分解をスキマー型TG-DTA-PIMS(光イオン化質量分析)で分析することにより、分解ガスをリアルタイムに特徴付け、それぞれのナイロンを簡便に識別することができます[1]。
測定・解析例
類似構造をもつ代表的な3種類のナイロンにおける不活性ガス中でのTG-DTA-EI/PIMS測定の比較結果を図1に示します。従来の電子衝撃イオン化法であるEIスペクトルは、分解成分のフラグメントイオンが低いm/z領域で互いに重なり合い、個々のナイロンを直接、特徴付けて識別することは困難です。これに対して、PIスペクトルは、サンプル間の異なる骨格構造に起因した分解成分の分子イオンのみで構成され、各ナイロンのスペクトルは明確な違いとして認識、識別できます。モノマーとして、ナイロン6はm/z 113のε-カプロラクタム(炭素数6)、ナイロン11はm/z 183のウンデカンラクタム(炭素数11)、ナイロン12はm/z 197のラウリルラクタム(炭素数12)等がマススペクトル上で明瞭に特徴付けられています。このように、PIMSのフラグメントフリーな特性は、サンプル間の微小な変化を敏感にキャッチするため、スペクトルによる指紋(フィンガープリント)分析としても役立ちます。
図1 ナイロンの不活性ガス中での熱分解生成物のEIスペクトル(左図)とPIスペクトル(右図)の比較
参考文献:[1] T.Arii, S.Otake, “Study on thermal decomposition of polymers by evolved gas analysis using photoionization mass spectrometry (EGA-PIMS)”, J. Therm. Anal. Cal., 91 (2008) 419-426.
推奨装置: 示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置ThermoMass Photo