卓上型TXRF装置 NANOHUNTER II 廃水中の微量有害元素の分析
はじめに
工場や事業所からの排水には、Cd、As、Pbなどの有害金属元素について、排水基準が定められています。廃水に含まれる様々な有機物や無機塩は微量元素分析の妨害となるため、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES法)などでは、酸分解や脱塩などの試料調製が必要となります。これに対して、全反射蛍光X線分析法(TXRF法)はICP-OES法などと比べ、マトリックスの影響を受けにくい測定が可能です。ここでは、TXRF法による廃水標準物質中の微量有害元素の分析例をご紹介します。
測定・解析例
図1 140-025-037廃水標準物質の13元素における標準値と分析値の相関図
SCP Science社製140-025-037 EnvironMAT廃水標準物質の原液と、100倍希釈した試料を内標準法により定量分析を行いました。試料中の有害元素について得られた分析値と標準値の相関を図1に示します。原液試料および希釈試料のどちらの濃度レベルでも、分析値と標準値が非常に良く一致しました。また、バックグラウンド強度の標準偏差の3倍から算出した検出下限値は、100倍希釈試料において十分に低い値が得られました(表1)。NANOHUNTER IIで搭載している二重構造湾曲型多層膜ミラーにより反射した高エネルギーのX線を励起源とすることで、高エネルギー元素のK線を効率良く励起することができます。図2に、原液試料に内標準物質としてAgを添加した試料の21~24 keVにおけるTXRFスペクトルを示します。CdのKαピークは内標準物質であるAgと共に明瞭に検出され、また100倍希釈試料におけるCdの検出下限値は6.3 µg/Lであり、廃水基準値より低い値が得られました。これより、µg/L ~ mg/Lの広い濃度範囲の廃水試料でも、TXRF法では特別な前処理を施すことなく、容易に分析を行えることがわかります。
表1 140-025-037廃水標準物質における有害元素の検出下限 (100倍希釈)
図2 140-025-037廃水標準物質(原液試料)の高エネルギー領域TXRFスペクトル
推奨装置
- 卓上型全反射蛍光X線分析装置 NANOHUNTER II