エネルギー分散型蛍光X 線分析装置NEX DE -缶詰食品中に含まれる金属元素の分析-
はじめに
缶詰食品中には、缶の素材として使われているブリキから溶出したスズ(Sn)が含まれています。国連食糧農業機関 (FAO) と世界保健機関 (WHO) が合同で作成した国際的な食品規格であるCODEX(1)では、缶詰食品中に含まれるSnの上限値を250 mg/kgと定めており、これを簡易に分析する方法が求められています。今回,エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX DE を用いて缶詰の果物中に含まれるSnの分析を行った例をご紹介します。
測定・解析例
市販されている果物のシロップ漬け缶詰を開封し、冷蔵庫で数日放置した後に食品用ミキサーでペースト状にして試料容器に詰め、 NEX DE を用いて測定時間30秒でSnの測定を行いました。定性スペクトル及び試料容器に充填したペーストの画像を図1,2に、Sn含有率の分析結果を表1に示します。開封直後では100 mg/kgと基準の範囲内であったSnの含有率が、5日後には缶からのSnの溶出が進んだことで468 mg/kgと上限値を上回っていることが分かります。このように、NEX DEを用いることで缶詰食品中のSnのスクリーニング分析が可能です。
図1 Snの定性スペクトル
図 2 試料調製の流れ
表1 Sn 含有率の分析結果 (mg/kg)
CODEXでは、 Snと同様に缶詰食品中に含まれる鉛(Pb) についても上限値1 mg/kgを定めています。図 3に、果物ペーストに 1 mg/kgのPbを添加した試料の定性スペクトルを示します。Pbを添加していない試料と比較してPb由来のピークが得られており、Snと同様にPb の分析にも NEX DE を利用できることが分かります。
図3 Pbの定性スペクトル
推奨装置
- エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX DE
(1) 食品及び飼料中の汚染物質及び毒素に関するコーデックス一般規格 (CODEX STAN 193-1995)