卓上型全反射蛍光X線分析装置 NANOHUNTER II ガラス表面に残留する研磨材の定性分析
はじめに
図1 TXRFの原理
全反射蛍光X線分析法(TXRF)は、試料すれすれに入射したX線により表面近傍元素を効率良く励起でき、かつバックグラウンドの原因となる散乱X線がほとんど発生しない測定手法です(図1)。その特長を活かして、表面が平滑なガラス等の基板上に存在する微量元素を高感度で分析することが可能です。
測定・解析例
ガラス表面の微細な傷の除去や平滑度向上のための研磨工程では、様々な材料が使用されています。古くはヘマタイト(Fe2O3)粒子が用いられていましたが、最近ではバストネサイト(CeO2主成分)粒子が主流となっています。更に高価な希土類系材料の代わりとなる新しい材料の検討もなされています。
バストネサイト研磨材を用いると主成分であるCeO2がガラスと化学的に反応することで効果的に研磨できますが、同時に研磨後の試料表面に残留しやすいことが知られています。市販のガラス基板を測定したところ、研磨材成分であるCeやBaが検出され、表面に研磨材が残留していることを示唆するスペクトルが得られました。アルミナ系研磨材で再研磨すると除去できることを図2の研磨前後の定性スペクトルが示しています。
図2 ガラス研磨材が残留する試料と再研磨後試料の定性スペクトル
入射X線が内部まで到達する汎用XRFでは散乱X線強度が非常に強く検出されるため、基板表面に残留する研磨材成分を検出することはできません。一方、TXRFは表面近傍のみを効率良く励起し、かつ、散乱X線が発生しない光学系のため、表面情報を高感度で取得できる測定手法です。
XRFは化学的に性質の似ている元素でも分離できる特長を持つことから、La,Ce,Nd等の希土類元素も個別に検出することが可能です。希土類元素の複合化合物である研磨材の定性分析などに応用できます。
推奨装置
- 卓上型全反射蛍光X線分析装置 NANOHUNTER II