異方性材料(布地)の熱伝導率測定
Application Note
B-TA4015
はじめに
布の保温性が衣服の快適性に大きく寄与することはよく知られていますが、布の有効熱伝導率は保温性を構成する一要因で、基本的熱物性値として重要となります。布は繊維、空気、水分からなる複合体であり、布の熱伝導現象は、繊維、空気、水分おのおのの熱伝導率および繊維間の輻射、対流などが組み合わさった複雑な現象となり、得られる熱伝導率も見かけ量としての性格をもちます。他方、繊維は高度の分子鎖配向を有すると考えられ、必然的に熱伝導率にも強い異方性が存在します。
TRIDENTのMTPSセンサーを用いて、布地の測定方向への形状を工夫し、繊維の軸方向と径方向の熱伝導率への測定面を変えることで、熱伝導率の異方性を測定してみました。
測定・解析例
・測定サンプル:市販の布地(繊維の間に断熱材料を挟み込んだ3層構造の布地)
・使用装置と測定方法:熱伝導率測定装置 TRIDENT/MTPSセンサー
(1)布地の表面をそのままMTPSセンサー上にセットして布地の軸方向の熱伝導率を測定
(2)布地をロール状に巻き付けφ18mm以上の径を確保し、布地の径方向の熱伝導率を測定
測定結果より、厚さ方向zと径方向xともに熱伝導率はそれぞれ良好な再現性(5回)を示しています。
布地は、厚さ方向に繊維生地で断熱材を挟み込む3層構造であり、厚さ方向では、MTPSセンサー面は、繊維生地側の面と接触し、他方、布地をロール状に巻き付けた径方向面では、内部の断熱材層がMTPSセンサーと多くの接触面を持ちます。その結果、径方向では、より断熱材の熱伝導率を強く反映するため、軸方向に比べ明らかに小さな値を示しております。
参考文献
(1). 川端季雄,繊維機械学会誌(月刊せんい),39(12),184(1986).
推奨装置・推奨ソフトウェア
- 熱伝導率測定装置 TRIDENT