EVAの酢酸ビニル含有量の影響
Application Note
B-TA3001
はじめに
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は酢酸ビニル(VA)の含有量により、ゴム弾性、柔軟性が変化し、柔軟性をもつプラスチックのサンダルやフィルム、接着剤など多種多様な用途への応用が可能です。このような性質はEVAの分子運動と密接な関連があるため、従来、DSCや粘弾性測定によるEVAの分子運動性評価が行われてきましたが、今回はTSCを用いてEVAのVA含有量による分子運動性の変化を評価し、相補的な情報を得ることができました。
測定・解析例
EVAフィルム試料を25℃で30min,1MV/mの条件で分極し、これを-150℃まで冷却後に5℃/minで昇温してTSCを観測しました。各試料にて0℃以下と以上の温度域にそれぞれピークが確認できました。-40~-30℃のTSCピークはEVAガラス転移温度に近く、主鎖のミクロブラウン運動に起因するβ緩和由来のピークであると考えられます。ピーク強度はVA量に依存しており、有極性のアセトキシ基の増加が分極に寄与しています。一方でピーク温度はVA量に寄らずほぼ一定でした。これは動的粘弾性の結果とも一致しています。
また20~40℃のTSCピークは結晶の運動に起因するα緩和由来のピークであると考えられます。ピーク温度はVAが増加すると低温側にシフトし、その強度はVAに比例して増加しました。α緩和は粘弾性測定でも確認されているものの今回の結果ほど明瞭ではなく、TSCがEVAの分子運動性評価に新たな知見をもたらす可能性があります。
図1 VA含有量を変化させたEVAにおけるTS
参考文献
1) 小坂勇次郎, 高分子, 18(5), 310 (1969).
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TS-POLAR、TS-FETT