TG-MS を用いた EVA 樹脂の UV 劣化の評価
Application Note
B-TA2041
はじめに
太陽電池モジュールは太陽電池セルを封止材のEVA樹脂で覆い、それをガラスとバックシートで挟んであります。屋外での長期間の運用で、EVA樹脂部分の黄変・白濁といった劣化がしばしば見られ、これによって発電性能へ悪影響を及ぼすこともあります。ここでは劣化要因の一つであるUV照射による影響をTG-MSにて評価しました。
測定・解析例
図1(a)にUV未照射及びUVを150、420分照射したEVA樹脂についてTG-MSを測定した結果を示しました。今回、MSのイオン化には化学イオン、CI法を使用しています。CI法は一般的な電子イオン化、EI法に比べて分子量関連イオンを検出しやすいという特長があります。ここでは試薬ガスにメタンを使用したポジティブCI(PCI)でMS測定を実施しました。EVA樹脂を加熱すると、UV照射の有無にかかわらず360℃と480℃付近の2段階の減量が確認されます。1段目の減量では酢酸(PCIでm/z61)が、2段目の減量では脂肪族炭化水素類(一例として1-ヘキセン、PCIでm/z83)がそれぞれ発生していることが図1(b)のマススペクトルから分かりました。UV照射前後で比較すると、酢酸の発生量がUV照射によって減少していますが、炭化水素類にはほとんど変化が見られませんでした。光照射に起因するEVA劣化では酢酸の脱離が報告されており[1]、本結果と一致しています。
図1 (a)EVA樹脂のTG-MS、(b)360℃と480℃のマススペクトル、(c)予想されるEVA樹脂のUV劣化メカニズム
参考文献:[1] 古田倫明, マテリアルライフ学術誌, 24 (2012) 86-90.
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122/CおよびMASS-IF、GC/MS
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア