熱伝導率測定のアプリケーション(ポリマーシート編)

Application Note A-TA4008

はじめに

電子産業やパワーエレクトロニクス分野においては、金属製の放熱部品間の接着に用いられる高分子系放熱材料(放熱シート)の熱伝導性を飛躍的に向上させることが急務となっている

ポリイミド(PI)は優れた機械的強度・耐熱性・絶縁性などを有するスーパーエンプラの一種であり、半導体デバイス内の絶縁膜や表面保護膜に広く使われている。

一般に、有機系の高分子物質は加工性に優れた良絶縁体であるため、金属やセラミックスに比して熱伝導性が 13 桁低い (0.10.55 W/mK)また、非晶性高分子の一軸延伸により、熱伝導率に大きな異方性が生じることも知られている。

そこで 本アプリケーションでは、放熱シートや層間絶縁膜において重要性の高い高分子フィルムの膜厚方向への熱伝導性に着目し、PI膜の膜厚方向の熱伝導率についての測定テクニックの一例を紹介する。

高分子系放熱材料

 

膜厚の異なる3種類のPIフィルム(20μm, 50μm, 225μm) 

の熱伝導率測定データ

熱伝導率の値は、5回の平均値を示し、何れも相対標準偏差RSD)は、1%以下である。

膜厚の異なる3種類のPIフィルムの熱伝導率測定データ

参考値:ポリイミドシートの熱伝導率 0.18W/mK

PIフィルムの膜厚の異なる3種類(20μm, 50μm, 225μm)の伝導率を比較

PIフィルムの膜厚の異なる3種類の熱伝導率を比較

厚の異なる各フィルムの伝導率の結果より、それぞれ単一膜厚サイズの測定は不可能であったが、フィルムを重ね合わせて、トータル膜厚を増加させることにより、いずれのフィルムも600μm以上で、熱伝導率の値が収束、安定し、一定の値(0.2W/mK)を示した。 

PI膜の膜厚方向の熱伝導率の測定法として有効であることが示された。 

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