有機化合物の吸水と脱水挙動
Application Note
B-TA1003
はじめに
試薬によっては吸湿性をもつものがあります。そして、吸着した水にも結合力が強い水と結合力が弱い水があります。これは、湿度制御や温度制御をすることで判断をすることができます。しかし、通常のTG-DTAでは湿度の制御ができないため、多湿から乾燥、逆に乾燥から多湿状態にしたときといった、湿度に依る重量変化を測定することはできず、温度に依る重量変化しか測定することしかできません。
測定・解析例
水蒸気発生装置(HUM)を接続したTG-DTAを用いることで、湿度を制御しながら、試料の重量変化を測定することができます。
乾燥雰囲気(25℃、2%RH)で1回目の昇温を行い、その後25℃に保持したまま水蒸気濃度を90%RHからドライまで2回変更します。続けて2回目の乾燥雰囲気での昇温をおこないます。
水蒸気雰囲気中のα-シクロデキストリンのTG測定を図1.に示します。
測定結果は、1回目の加熱による脱水の減量(3.5%、6%)が2段階でみられます(①)。冷却時には、水分の吸着による1.5%程度の増量がみられます(②)。水蒸気(25℃、90%RH)を加えると、水分の吸着による約11%の増量がみられます(③)。測定試料には25℃、90%RHの雰囲気で無水状態から12.5%程度の水分が吸着することがわかります。水蒸気濃度を変化させたときには減量が約6.5%みられます。(④、⑤、⑥)
このように、吸着水の総量は約12.5%であり、このうち約6%の水は25℃の乾燥雰囲気では脱水せず、加熱することで脱水することがわかります。結果では、水の吸収と脱着の量は約6.5%であり、これは水蒸気濃度に依存します。
図1. α-シクロデキストリンの吸水・脱水挙動
推奨装置・推奨ソフトウェア
- Thermo plus EVO2 TG-DTA8122/HUM-1
- Thermo plus EVO2ソフトウェア