熱分析豆知識

 

第43回 TMA(熱機械分析)によるガラス転移の測定

非晶質(アモルファス)固体のガラス転移は通常、DSCで測定するのが一般的ですが、サンプルの膨張・収縮・軟化を測定するTMAが利用できる場合があります。
TMAには、固体状のサンプルおよびフィルム・シート状サンプルの厚み方向を測定する圧縮荷重法、フィルム・シート状サンプルの長さ方向について測定する引張荷重法、軟化に伴うピンの貫入を測定するペネトレーション法があります。 圧縮荷重法および引張荷重法においては、ガラス転移温度より低温側の膨張とガラス転移後の膨張には差が見られ、ガラス転移はTMA曲線に膨張側への変曲として現れます。これは、温度上昇による膨張(熱膨張)に加え、ガラス転移に伴って分子間距離が増大することに起因すると考えられます。

圧縮荷重法ではガラス転移により一旦膨張した後に軟化による収縮を示すサンプルもあり、膨張よりも収縮が大きく現れるケースもあります。この場合ガラス転移を確認するためには、荷重を小さくして膨張側への変化が現れるかどうか検討する必要があります。
ペネトレーション法では、上記のようなガラス転移後の軟化を検出し、それをガラス転移温度としています。したがってペネトレーション法ではガラス転移自体の挙動ではなく、ガラス転移後の軟化によるピンの貫入を測定していることになり、測定される軟化(貫入)温度はサンプルに加わる単位面積当たりの荷重(ピン径と荷重)に依存して変化します。引張荷重法では、膨張側への変化として、融解や温度上昇による軟化(ガラス転移によらない)によるケースもあり、ガラス転移との区別が困難なため注意が必要です。

なお、パウダー状のサンプルについては、TG-DTAやDSCで使用する試料容器にサンプルを詰め 金属棒などで適度に押し固め、その上に試料容器材料の板(フタ)を載せ、圧縮荷重法により、膨張量の膨張側への変化(変曲)を検出することにより測定できる場合もあります。
このように、ガラス転移はエネルギー的な変化と機械的な変化の両方を伴うことから、DSCだけでなくTMAでも検出できる可能性があります。

製品情報
DSCvesta2
TG-DTA8122/HUM
TMA/HUM

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