熱分析豆知識
第36回 ポリマーのheating-cooling測定 熱履歴とは?(2)
DSCで結晶性ポリマーの1st. heating-cooling(冷却)-2nd. heatingの測定(昇降温測定)を行った場合、一般的には、1st. heatingで融解ピークが現れ、cooling過程で結晶化が起こりますが、cooling過程の冷却速度が非常に速い場合には、cooling過程で結晶化が起こらず非晶化した状態(アモルファス状態)となることがあります。その場合、cooling過程で結晶化による発熱ピークは現れず、ガラス転移によるベースラインのシフト(階段状変化)が見られます。
2nd. heatingでは、ガラス転移によるベースラインのシフトは見られ(ガラス転移は可逆的変化)、それ以降に結晶化(冷結晶化)が起こらなければ、融解ピークは現れないことになります。
また、cooling過程での冷却速度が十分遅く、cooling過程で結晶化が起これば結晶性となり、その場合には2nd. heating過程でガラス転移によるベースラインのシフトは見られず、融解による吸熱ピークが現れることになります。
このことは、結晶性が高い(非晶質の割合が小さい)サンプルの場合は、ガラス転移によるベースラインのシフトは非常に小さく検出が困難であり、また融解による吸熱ピークが明確に現れることを、そして、非晶性のサンプル(結晶質の割合が小さい)の場合は、ガラス転移によるベースラインのシフトが大きく現れ、また融解による吸熱ピークは小さく検出が困難になることを示しています。
このように、ガラス転移・結晶化・融解を目的とした測定においては、測定サンプルの結晶性・非晶性を考慮した測定および解析を行う必要があります。
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