市販医薬品の比較分析:PartⅡ
何がわかるのか?
市販されている医薬品(A、B)の加熱挙動を示差熱天秤-光イオン化質量分析(TG-DTA-PIMS)[1]によって比較分析してみました。
医薬品では、主成分が同じでも、きれいに成形できるような賦形剤や保存料など、主成分以外が異なったり、薬の形の製法が違うこともあります。また、非常にわずかですが、主成分の純度が異なることが考えられます。TG-DTA-PIMSを用いれば、加熱によりサンプルより脱離する有機ガスを分子イオン状態でIn-situに分離・識別できるため、市販されている医薬品の微少な差異を観測することができます。
測定・解析例
図1 2種類の医薬品の加熱プロセスのTG-DTA-PIMS曲線とPIマススペクトルの比較
同一試料量の2種類の市販医薬品(高血圧症、狭心症、不整脈の治療薬【主成分:メトプロロール酒石酸塩】)A,BをTG-DTA-PIMSにて測定すると、300℃付近の発生ガスの脱離量に顕著な差異が認められます。A,B両医薬品ともに、300℃付近にて発生しているガスは、PIマススペクトルによって、図中に示すm/z 152とm/z 192の成分であることが容易に分ります。さらに、これらの成分の加熱脱離挙動を表すm/z 192のマスクロマトグラムを比較すると、医薬品Aに比べて医薬品Bでは4倍以上の脱離量であることが分ります。このように、TG-DTA-PIMSを用いることで、TG-DTAのみでは解析できない詳細なガス情報の差異をも明確に捉えることができます。
参考文献:[1] 有井忠, “スキマー型示差熱天秤-光イオン化質量分析法-TG-DTA-PIMS-”, リガクジャーナル, 41 (2010), No.2, 20-25.
推奨装置: 示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置ThermoMass Photo
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