アプリケーションノート B-TA1068
はじめに
熱収縮チューブは、ポリオレフィン、フッ素樹脂、PVC等の熱可塑性ポリマーをチューブ状に押し出し成型後架橋させ、さらに加熱して径方向に内圧を加えた後、冷却して製造されます。加熱加圧時に記憶された形状が加熱により元の形状に戻り径方向に収縮する性質を利用して、電線の接続部や被覆材の保護等に使用されています。TMA引張荷重法を使用して一定荷重下で昇温し、半径方向と長さ方向について膨張・収縮を測定し、比較しました。
測定・解析例
サンプルは、内径12mmの熱収縮チューブを半径方向および長さ方向からサンプル幅5mm、長さ14mmのサイズに切り出したものを使用しました。またチャック金具で長さ10mmに固定、引張荷重20mN、昇温速度5℃/minの条件で測定を行いました。
図 1 TMA測定結果
25℃を基準としたそれぞれの温度における膨張率を下表に示します。
| Temperature °C | Expansion(⊿L/L0) % | |
| 半径方向 | 長さ方向 | |
| 40.0 | 0.17 | 0.24 |
| 50.0 | 0.30 | 0.53 |
| 60.0 | -0.64 | 0.84 |
| 70.0 | -2.64 | 1.06 |
| 80.0 | -5.58 | 1.24 |
| 90.0 | -11.73 | 1.74 |
| 100.0 | -29.95 | 2.53 |
| 110.0 | -37.57 | 0.49 |
| 120.0 | -37.60 | 0.32 |
半径方向では、50℃付近まで膨張を示し、その後60℃付近から収縮が開始し120℃では約38%の収縮となっています。通常、熱収縮チューブは半径方向の収縮率が50%程度になるように設計・製造されていますが、今回の測定では引張方向(収縮と逆方向)に20mNの荷重が加えられた結果、収縮が抑えられたことが推定されます。長さ方向については、100℃付近まで膨張が見られ、その後収縮が開始し、120℃では、約0.3%の膨張を示しています。