MOFの発生ガス分析

アプリケーションノート B-TA2045

はじめに

MOF: Metal Organic Frameworks(金属有機構造体)とは金属イオンと架橋配位子が形成する細孔特性を有し、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質材料(三次元ミクロポーラス材料)です。CO2をMOFと反応させて分離回収する吸着分離法は効率的なガス貯蔵・分離・イオン輸送など様々な応用に期待されています。

吸着したガスを加熱放出させるためには試料の分解温度を把握し、分解しない温度で処理する必要があります。加熱時の熱挙動を把握する上で、熱分析は有効な測定手法であると言え、特に発生ガス分析はガスの種類が特定できるので吸着ガスの脱離挙動や試料の分解温度を的確に把握することができます。

今回はMOFの一つである、HKUST-1について発生ガス分析を行いました。

測定・解析例

HKUST-1をTG-DTA/GC-MSにて測定しました。He雰囲気下で室温~500℃まで10℃/minで昇温しました。MSイオン化法はEI法で測定しました。

図1にTG-DTA結果とMSイオンサーモグラムを示します。TG結果では3段階の減量がみられました。それぞれの発生ガスピークのマススペクトルを確認したところ、図2に示す通り100℃付近でMethanol、260℃付近でDMF、350℃付近ではCO2の発生が確認できました。このことから、50~150℃および200~300℃の2段階の減量はHKUST-1の合成時における残留溶媒の脱離によるものと考えられます。3段階目の減量ではCO2の発生が見られ、試料は300℃で熱分解すると考えられます。

B-TA2045_figure1
図1 TG-DTAとTICおよびMSイオンサーモグラム(m/z31,44,73)

B-TA2045_figure2
 図2 発生ガスピーク時のマススペクトル(95.7℃、256.5℃、351.6℃)

(名古屋大学 松田亮太郎先生監修)
(試料提供 名古屋大学 松田亮太郎先生、日下心平先生)

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