アプリケーションノート B-TA1062
はじめに
水冷エンジンの冷却水には、水にエチレングリコールやプロピレングリコールを混合した溶液が一般的に使用されています。実際には、使用環境に応じて濃度30~50%の溶液に各種添加剤を加えたものが、不凍液として供給されています。 本測定では、DSCを用いて水および濃度の異なるエチレングリコール水溶液の結晶化(凝固)に伴う発熱ピークを測定しました。
測定・解析例
試料は、水とエチレングリコールを重量比30%、40%で混合した溶液を作製し、約14 mgをAl製シール容器に封入して、冷却速度2 ℃/min、N₂雰囲気下で測定を行いました。
図1 DSC測定結果
一般に、水やアルコールなどの結晶化(凝固)温度は、過冷却により融解温度(融点)から予測される温度より低くなることが知られています。今回の測定でも、水の結晶化(凝固)に伴う発熱ピークの開始温度は融点の0℃ではなく、−20℃に現れました。過冷却の程度は、冷却速度、試料量、容器内での試料の形状や接触状態など、結晶核生成の条件によって変化します。 なお、融解温度(融点)は測定条件の影響を受けにくく、水の場合は融解に伴う吸熱ピークが0℃に観測されます。
今回の結果から、過冷却による結晶化温度の低下を20℃と仮定すると、凝固開始温度は濃度30%では約−15℃(−34.7℃ −(−20℃))、40%では約−27℃(−46.8℃ −(−20℃))と推定されます。したがって、不凍液として実際に使用可能な低温限界は、濃度30%で約−15℃、40%で約−27℃と考えられます。