アプリケーションノート B-TA1061
はじめに
DSCを用いて低沸点の液体を開放型の試料容器で測定すると、沸点以下の温度から蒸発が起こるため、正確な測定が困難になります。シール容器を使用すると蒸発は抑えられるものの、ピークは現れません。そこで、ピンホールを設けたシール容器を使用することで、蒸発に伴う吸熱ピークを測定することが可能になります。 以下に、ピンホールシール容器による測定結果と沸点との比較を示します。
測定・解析例
測定はサンプル(1~3mg)を、ピンホールを開けたAl製シール容器に入れ、昇温速度5℃/min、静止空気中で行いました。
図1 DSC測定結果
下表に各測定結果のピーク温度および沸点を示します。
サンプル | ピーク温度 ℃ | 沸点 ℃ |
エタノール | 78.90 | 78.6*1 |
水 | 99.99 | 100.0*1 |
n-ブチルアセテート | 125.67 | 126.1*2 |
デカン | 174.16 | 174.2*1 |
エチレングリコール | 197.92 | 197.3*1 |
*1 化学便覧基礎編Ⅱ 改訂5版 *2 関東化学株式会社 安全シート
今回の測定では、各サンプルのピーク温度と沸点がいずれも約0.5℃の範囲内で一致しました。このことから、ピンホール容器を用いたDSC測定は、有機溶媒などの簡易的な沸点測定法として有効に利用できると考えられます。