軽油中のワックスの析出
アプリケーションノート
B-TA1060
はじめに
一部の重油や軽油中に含まれるノルマルパラフィンは、低温域で結晶として析出・成長してワックスを形成します。このワックスの発生による流動性の低下は、燃料供給ラインやフィルターの詰まりを引き起こし、エンジンの始動困難や出力低下の原因となります。DSCを用いて冷却過程での結晶化開始温度を測定することで、軽油の使用可能温度範囲に関する情報が得られるかどうかを検討しました。
測定・解析例
軽油をAl製シール容器に入れたものをサンプルとし、電気冷却ユニットを使用して冷却速度5°C/minおよび2°C/minの冷却速度で冷却し、結晶化に伴う発熱挙動を測定しました。
図1 DSC測定結果
冷却速度5°C/minの測定結果では-4°C付近から-80°C、冷却速度2°C/minの測定結果では-5°C付近から-80°Cにかけて連続した結晶化による発熱ピークが現れています。
今回の軽油サンプルでは、冷却速度5°C/minおよび2°C/minでの発熱開始温度には大きな差は認められず、ほぼ同じような温度域でノルマルパラフィンの析出とワックスの形成が起こると考えられます。
市場に流通している軽油には、低温流動性改善剤が含まれており地域や季節に応じた低温流動性が付加されています。
このような軽油の低温流動性の評価について、DSCを使用した冷却過程の結晶化(析出)開始温度の測定および比較が利用可能であると考えられます。
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