ダイナミックDSC(温度変調DSC)
温度変調DSC法
従来の一定昇温にsin波(正弦波)で変調させた温度を加えて測定する手法で、重なった反応の分離や比熱容量の算出を簡単行うことができます。
STAの場合、最大1500°C※1までの測定が可能です。
- 分離観察が可能
エンタルピー緩和、ガラス転移、再結晶化が重なっていても分離可能です。 - アップグレード可能
お使いのDSC, STAに追加可能です。
対象装置 DSC:DSCvesta2、DSCvesta、DSC8231
STA:STAvesta、TG-DTA8122 - 変調周期5秒~
周期5秒から対応! 周波数分散解析等がさらに高精度にできます(最大周期200秒)。 - 比熱容量測定が簡単
従来のDSC測定より容易に比熱容量が測定できます。 - データが見やすい
不可逆DSCゼロシフト機能を使うと解析後のデータを見やすく分離できます。
測定例
◆DSC装置での測定
ダイナミックDSC測定
試料:医薬品 昇温速度:3°C /min.、周期:36 sec.、振幅:0.43°C
得られる測定結果(左図)から一周期の平均(DSC total)、sin波に追従する成分(DSC rev.)と追従しない成分(DSC non-rev.)に分離することで、3つのDSC曲線が得られます。この時DSC totalは等速昇温結果に相当し、DSC rev.は可逆成分、DSC non-rev.は不可逆成分に相当する挙動を示します。解析後の結果(右図)ではDSC totalでは61℃に吸熱ピーク、77℃、110℃に発熱ピークが見られ、ガラス転移は確認されていませんが、DSC rev.では60℃にガラス転移によるシフトが確認できています。ガラス転移は比熱容量の変化であるため、可逆成分であるDSC rev.に現れます。このようにダイナミックDSC測定を行うことで、等速昇温測定ではガラス転移がエンタルピー緩和や結晶化などの不可逆反応と重なってしまう場合にガラス転移を分離して確認することができます。
ダイナミックDSCによる比熱容量解析
ダイナミックDSCでは解析によって試料の比熱容量を計算することが可能です。事前にサファイア(Al2O3)を測定試料と同条件で測定を行い較正することでDSC rev.の結果から試料の比熱容量を算出します。
◆STA装置での測定
STA(TG-DSC)のダイナミックDSC測定
試料:シリカ(SiO2)粉末
昇温速度:5°C /min、周期:60 sec、振幅:2°C
石英は、常温常圧下ではα-石英が安定であるが温度変化によって以下のようにβ-石英に相変化を起こすことが知られています。
α-石英 → 573℃ → β-石英
TG-DSC(TG-DTA)のダイナミックDSC機能では、従来のDSCでは測定できなかった広い温度範囲での比熱容量(Cp)測定が可能になります。
昇温・降温速度 | 20°C/min (最大) |
温度振幅 | 0.02°C~5°C (設定分解能:0.01°C) |
変調周期 | 5s※2~200s (設定分解能:1s) |
温度範囲※1 | 装置および電気炉の仕様に準ずる |
※1 最高温度は電気炉の仕様に準じます。
※2 変調周期は5秒~設定が可能ですが、STAvesta、TG-DTA8122は40秒よりも短い周期の場合は温度制御ができない場合があります。

