アプリケーションノート B-XRI1030
はじめに
アイスクリームは、水分・油脂・空気が複雑に混ざり合った多相系の食品であり、各成分の分布が食感や溶けやすさに影響します。一般的な表面観察では、商品の外観や表層の状態を確認できますが、内部の3次元構造を把握することはできず、製品特性を十分に理解することは困難です。一方、X線CTを用いることで、試料を破壊することなく内部構造を立体的に可視化できます。さらに、中低温アタッチメント(温調範囲:-25℃~40℃、対応試料サイズ:最大φ8 mm×4 mm)を用いることで、アイスクリーム本来の構造を保持した状態で、各成分の分布を明確に捉えることが可能です。本稿では、高分解能X線顕微鏡nano3DXと中低温アタッチメントを用いて、凍結状態を維持したままアイスクリームの内部構造を観察しました。
測定・解析例
中低温アタッチメントの温度を-18℃に設定し、食感が異なる2種類のアイスクリーム(A:しっかり、B:なめらか)を3.31 µm/voxel、撮影時間10分で撮影しました。図1にアイスクリームA、Bの断層画像を示しました。アイスクリームAでは空隙(黒)、油脂(暗い灰色)、氷(明るい灰色)の分布を確認できます。一方、アイスクリームBでは氷のサイズが非常に小さいため氷の分布を確認できません。
図1 断層画像(左:アイスクリームA、右:アイスクリームB)
撮影後、Φ1.3×1.3 mmの範囲に含まれる空隙をサイズ別に着色しました(図2)。青色の着色部位は空隙が小さく、赤色の着色部位は空隙が大きいことを表しています。
解析の結果、アイスクリームAに含まれる空隙は小さく、空隙率は5.1%でした。一方、アイスクリームBでは大きい空隙も含まれており、空隙率は46.0%と高い値を示しました。
アイスクリームAのような空隙が小さく空隙率が低い構造は、しっかりとした食感を生み出し、アイスクリームBのような空隙が大きい構造は、なめらかで口当たりが柔らかな食感に寄与していると考えられます。
図2 空隙サイズの解析結果(左:アイスクリームA、右:アイスクリームB)
中低温アタッチメントを用いた撮影により、常温では形状が崩れてしまう製品の成分分布や空隙のサイズを捉えることが可能になりました。このような評価方法は、食品設計や品質管理における指標としての活用が期待されます。
推奨装置・ソフトウェア
推奨装置:高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX
アタッチメント:中低温アタッチメント
解析ソフト:VGSTUDIO MAX*(フォーム・パウダー解析モジュール)
* VGSTUDIO MAXはHexagon Manufacturing Intelligence株式会社の製品です。