アプリケーションノート B-XRI1029
はじめに
錠剤内部の空隙は錠剤の機械的強度や溶出速度などに影響するため、空隙の観察やサイズ評価が重要です。しかし従来の顕微鏡観察では、試料切断に伴う内部構造の変形の懸念や、空隙の奥行きや連続性を直接把握できないという理由から、サイズ評価は容易ではありませんでした。このような課題に対し、非破壊で内部を観察する方法としてX線CTによる3次元観察と数値解析が注目されています。ここでは、市販の速崩錠を対象に、粒子間の空隙サイズを解析した事例をご紹介します。
測定・解析例
未切断の錠剤を画素サイズ2.6 μmでCT撮影しました。図1は錠剤の3次元データから切り出したCT断層画像です。錠剤の中心部と外縁部を拡大観察しました。いずれの拡大図においても、200 µm未満の微細な粒子が石垣のように積層しており、粒子間には空隙が存在していることがわかります。しかし、錠剤の中心部と外縁部では粒子間の空隙サイズが異なって見えます。
図1: 錠剤のCT断層画像と拡大図
(未解析、上:錠剤の中心部、右:錠剤の外縁部)
図2は空隙サイズを数値解析した結果の断層画像表示です。空隙サイズを青(5 µm)〜赤(15 µm)のグラデーションで塗り分けました。空隙サイズは最大15 µmに及ぶことがわかります。また、中心部では空隙サイズが大きく、外縁部では小さくなっていることがわかります。これは、製造工程における圧力の影響や、粒子の充填状態の違いを反映していると考えられます。
図2: 錠剤のCT断層画像と拡大図
(空隙サイズの解析結果、上:錠剤の中心部、右:錠剤の外縁部)
図3は空隙サイズのヒストグラム(空隙サイズに対する画素の個数)です。ヒストグラムの作成範囲は図2の枠内(1.0×1.0×0.3 mm)で、錠剤の中心部と外縁部で得られた解析結果を比較しました。空隙サイズの平均、空隙率は、いずれも錠剤の外縁部で小さくなっていることがわかりました。ヒストグラムからも錠剤の外縁部で空隙サイズが小さく、個数の総量が小さくなっていることがわかります。
図3: 空隙サイズの解析結果のヒストグラム
(上:錠剤の中心部、下:錠剤の外縁部)
以上のように、X線CTは、錠剤を構成する粒子間の微細な空隙を非破壊かつ高解像度で可視化します。さらに3次元データの解析によりサイズを数値化できるため、複数の錠剤を比較すれば、製造条件による構造の違いを数値的に評価することができます。
推奨装置・ソフトウェア
- マイクロX線CT装置 CT Lab HX
- 高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX
- VGSTUDIO MAX 座標計測モジュール、肉厚解析モジュール
VGSTUDIO MAXはHexagon Manufacturing Intelligence株式会社の製品です。