アプリケーションノート B-XRI1028
はじめに
湿布薬(貼付剤)の中には、薬効成分が結晶として存在しているものがあります。このような製剤では、結晶の分散状態や経時変化が薬物の放出速度に影響するため、その評価が重要です。しかし、ラマン分光法やX線回折法では基剤や剥離フィルムなどの高分子材の影響により、結晶の観察が困難になることがありました。一方で、X線CTは、X線の高い透過力と、物質によるX線の吸収特性を利用することで、高分子材の内部に存在する結晶も可視化します。ここではマイクロX線CTを用いて市販の湿布薬に含まれる結晶を観察し、個々の結晶の体積を算出しました。
測定・解析例
湿布薬を画素サイズ5.3 μmでCT撮影しました。図1には湿布薬のCT断層画像を示します。X線CTでは、結晶の密度に対してグレーバリュー(画像の明るさ)が相対的に変化します。低密度の結晶は黒く、高密度の結晶は白く表示されるため、この断層画像からは、湿布薬の中に少なくとも3つの異なる成分が存在していることがわかります。
図1:湿布薬のCT断層画像
図2には、セグメンテーション(グレーバリューに基づいて3つの成分を色分け)した結果を示しました。このような処理を行うことで、各成分の結晶の、大きさや形状を視覚的にとらえることができます。たとえば、低密度の結晶(黄色)は大きく、高密度の結晶(赤色)は小さいことがわかります。
図2:湿布薬中の結晶に対するセグメンテーション結果
図3には、中密度の結晶を対象にした体積算出結果を示します。ここでは、結晶の体積を青色(体積小)~赤色(体積大)に塗り分けました。このような図からは、結晶の体積のばらつきを視覚的にとらえることができます。また、各結晶の体積や直径をレポートとして出力することもできます。
図3:中密度の結晶を対象にした体積算出結果
このようにX線CTを用いることで、従来法では困難だった製剤中の結晶の観察が可能です。この事例のように、複数成分の結晶から特定成分を抽出して数値解析することもできるため、製剤における特定成分の分散状態の評価や経時変化の確認への利用が期待されます。
推奨装置・ソフトウェア
- マイクロX線CT装置 CT Lab HX
- 高分解能X線顕微鏡 nano3DX
- VGSTUDIO MAX* 座標計測モジュール、欠陥介在物解析
*VGSTUDIO MAXはHexagon Manufacturing Intelligence株式会社の製品です。