3D X 線顕微鏡による 糠層の体積分率と厚さ分布の解析
アプリケーションノート
B-XRI1017
はじめに
植物の内部構造の観察や計測には、一般的に光学顕微鏡が用いられます。たとえば水稲米の品質評価では、玄米 の大きさや糠層の厚さが計測されますが、 エタノール浸漬や染色、切断などの前処理が必要です。3D X線顕微鏡 (X線CT)では前処理することなく試料を3次元画像化でき、非破壊で観察することで植物本来の構造をとらえること ができます。ここでは3D X線顕微鏡で水稲の実(もみ)をCT撮影し、糠層の体積分率と厚さ分布を算出しました。
測定・解析例
もみ(図1)をMo線源、5.1 μm/voxel、10分でCT撮影し、立体画像を作成しました (図2)。CT画像上で作成した断面において、糠層(玄米表面の皮)、胚乳(玄米 内部の白米)、胚(玄米先端の突起)を確認できます。胚乳と比較して糠層や胚が 白く描画されるのは鉄やマグネシウムなどのミネラルが多く、X線の透過率が 異なるためです。このようなCT画像の色の違い(輝度値)に基づいて、各成分を 分離(セグメンテーション)しました。

図1 水稲の実(もみ)
図2 もみの立体画像
次に糠層に着目し、セグメンテーション結果から玄米(もみ殻を除き胚を含む)における糠層(胚を除く)の体積分率を 算出しました(表1)。さらに糠層の厚さ分布を解析して立体画像上に着色表示しました(図3)。立体画像からは3次 元的な糠層の分布を確認でき、たとえば玄米の腹部と背部では糠層の厚さが異なることがわかりました。
表1 糠層の体積分率
玄米の体積 | 18.5 mm3 |
糠層の体積 | 1.1 mm3 |
糠層の体積分率 | 5.9vol% |

図3 糠層の厚さ分布の立体画像
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