偽造医薬品・ヘルスケア製品の現場検査

アプリケーションノート RAD003

はじめに

RAD003 sticker偽造医薬品や偽造ヘルスケア商品は世界的な問題であり、中には有害なおそれのある物質を含有する製品だけでなく、医薬品原薬(API)を含有しない、または含有量が薄められている製品もあります。このような問題の拡大により、現場での迅速かつ簡便なスクリーニング手法の必要性がますます緊急のものとして高まっています。

  • Results in the field
  • Measure a wide range of material types
  • Determine authenticity in seconds

蛍光を最小限に抑えた迅速な偽造品の同定

医薬品の同定

ラマン分光法は化学組成に対する特異性が高いため、真正品と偽造品の識別に適しています。785 nm励起を用いた従来の携帯型ラマン分光計に共通する難点は、蛍光の干渉です。1064 nmの励起波長を用いたリガクの携帯型ラマン分光計Progenyは、シグナルを妨害する蛍光を最小限に抑えることができます。このメリットを実証するために、市販の頭痛薬(緑色のカプセル)を、785 nm励起の携帯型ラマン分光計と1064 nm励起のProgenyで分析しました。図1に示すように、785 nm励起では蛍光由来のブロードな盛り上がりが見られ、物質固有のラマンピークを不明瞭にしています。しかし、Progenyの1064 nmの励起光は、真正の物質を同定するための固有のラマンピークを明確に示しています。

RAD003 Figure 1 Raman spectra from a green capsule of over the counter headache relief medication図1 市販の頭痛薬(緑色のカプセル)の785 nm(青)励起および1064 nm(赤)励起によるラマンスペクトル

医薬品の認証

下の図は、真正医薬品と偽造医薬品でラマンスペクトルが異なる2つの例を示しています。図2および図3は、それぞれシアリス錠の真正品と偽造品、市販の鎮痛剤粉末の真正品と偽造品のラマンスペクトルです。これらのスペクトルは全て、1064 nm携帯型ラマン分光計Progenyにより30秒未満の分析時間で得られました。いずれの場合も、ラマンスペクトルが明らかに異なるため、Progenyは偽造品と真正品を容易に識別することができます。真正の市販鎮痛剤は、アセトアミノフェン(パラセタモール)、アスピリン、カフェインの3つの原薬の混合物です。真正品と偽造品のラマンピークを注意深く比較し、さらに純カフェインのスペクトルとも比較すると、少なくとも偽造品の粉末に含まれるカフェインの量は真正品よりはるかに少ないように思われます。そのため、アセトアミノフェンとアスピリンの比率も異なっていると考えられます。カフェインが不足した偽造品では、薬の効き目が低下するおそれがあります。市販の鎮痛剤の場合、メーカーが最も懸念するのは効き目の低下かもしれませんが、他の多くの種類の生命にかかわる医薬品では、正しい原薬を含まない偽造品が悲惨な結果をもたらすおそれがあります。

RAD003 Figure 2 Raman spectrum of authentic and counterfeit Cialis tablet cores

図2 真正(青)および偽造(赤)シアリス錠の1064 nmラマンスペクトル


RAD003 Figure 3 Raman spectra of authentic and counterfeit commercial pain relief powders and pure caffeine

図3 真正(青)および偽造(赤)市販鎮痛剤粉末と純カフェインの1064 nmラマンスペクトル

ヘルスケア商品

ヘルスケア商品の偽造は、医薬品の偽造ほど悲惨な結果を招くおそれはないかもしれませんが、利益や評判悪化の可能性の点では、メーカーにとって大きな問題であることに変わりはありません。図4は、1064 nm Progenyによる歯磨き粉の真正品と偽造品のラマンスペクトルです。この場合も、真正品と偽造品のラマンスペクトルは明らかに異なっています。興味深いことに、偽造品のラマンスペクトルは、一般的な歯磨き粉の成分である炭酸カルシウムと非常によく一致しますが、それは真正品には含まれていません。

RAD003 Figure 4 aman spectra of authentic and counterfeit brand name toothpaste図4 歯磨き粉の正規品(青)と偽造品(赤)の1064 nmラマンスペクトル

まとめ

携帯型のラマン分光法により、規制当局やメーカーは市販品の化学組成をその場で調べることができるため、偽造品を迅速に同定し、サプライチェーンから即座に排除することが可能です。これらの分析は、堅牢な現場用携帯型装置を用いて、医薬品やヘルスケア商品の真贋を迅速かつ容易に識別できるラマンの能力を実証しています。また、蛍光を低減して一部の製品の同定を改善するという点で、1064 nm励起の携帯型ラマン分光計は785 nmの携帯型ラマン分光計に対してメリットがあることを示しています。1064 nmの励起光、真正品と偽造品を識別するラマンの特異性、そしてProgenyの手軽さ、携帯性、高品質のスペクトルが相まって、現場での真贋判定に最適な分析ツールとなっています。


 

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