アプリケーションノート B-SCX1014
はじめに
同じ分子であっても、再結晶溶媒や保管温度といった結晶化条件が異なると、分子配列が異なる結晶が晶出することがあります。これらは結晶多形と呼ばれています。医薬品の世界においても結晶多形が晶出することは多くあり、溶解性・安定性・吸収性など、製剤の品質や有効性に大きな影響を与えます。そのため、医薬品開発における結晶多形の評価は極めて重要であり、“どのような条件下で多形が生じるのか、あるいは多形に転移するのか”を把握しておく必要が生じます。そこで本アプリノートでは、XRD-DSC同時測定装置と単結晶X線構造解析を用い、各温度で生じる医薬品結晶多形の結晶構造を決定しました。
測定・解析例
測定対象として、多くの結晶多形をもつトルブタミド(C12H18N2O3S )を使用しました。図1に分子構造を示します。
図1:トルブタミドの分子構造
図2にはトルブタミド結晶の加熱・冷却に伴う結晶相の変化(相転移)を、XRD-DSC同時測定装置を用いて観測した結果を示します。X線回折パターンおよびDSC曲線にて、出発物質であるトルブタミドのForm-Ⅱからの相転移温度を確認しつつ、既知の結晶多形サンプル3種(Form I, II, V)を作製しました。
図2:XRD-DSCを用いて確認したトルブタミドの相転移挙動
次に、各Formの結晶をそれぞれのアルミパンから取り出し、単結晶X線構造解析による3次元構造の決定を行いました。得られた数十 μmサイズの結晶を、単結晶X線構造解析装置XtaLAB Synergy-Rを用いて測定・解析することで、各結晶相における分子配列の違いを明らかにすることができました(図3)。
以上のように、XRD-DSC同時測定装置を用いて相転移温度を調べ、各結晶多形に対して単結晶構造解析を行うことで、温度変化により生成する結晶多形の3次元構造を明らかにすることができます。本アプリノートでは既知であるトルブタミドの結晶多形を用いましたが、新薬開発における医薬品結晶多形の構造決定にも本手法を活用することが可能です。
図3:単結晶X線構造解析により得られた各トルブタミド結晶多形の結晶構造
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + X-ray DSC
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (XRD-DSCプラグイン)
- 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB Synergyシリーズ
- 単結晶構造解析 統合プラットフォーム CrysAlisPro