単結晶X線構造解析シリーズ #8. ツインの対策

概要:

第8回ではツイン(双晶)の種類を説明し、実空間・逆空間におけるそれぞれの特徴を紹介します。

前半はツインデータの処理と解析法について説明をします。
後半ではこれまでの講演にて説明をしてきましたCIFに関して、checkCIFの実行、よくある警告と対策、VRFの記述方法についてご紹介します。

Q&A:

Q1 : 逆格子ビューの見方を教えてください。反射点の削除は、Olex2では可能でしょうか。

A: 逆格子空間の確認方法は図にあるように、Lattice WizardのEwald explorerから見ることが可能です。詳細は第8回のP23にございます。 Olex2における反射の削除については、Olex2上のInfoタブ→Bad Reflectionsを開くと、FoとFcの一致度が悪い反射が赤く表示されますので、こちらをクリックすると反射をOMITして消すことが可能です。詳細は第6回のP38にございます。

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Q2 : Olex2で精密化した後にMinorな成分のTwinが見つかり、BASF(~0.01)を入れてR値が下がり十分な解析ができたと判断できる場合でも、CrysAlisProに戻って解析をし直す必要があるでしょうか?

A: 1%程度のマイナー成分のtwinが見つかった場合でも、R値が下がり十分な解析が得られたのであれば、通常の単結晶と同じように解析できたと考えても問題ありません。シングルの結晶に小さい結晶がついている場合なども反射としてはツイン特有の反射が見えるかもしれませんが、無視して単結晶として解析してしまっても多くの場合問題ありません。帰属できない電子密度が残るなど、解析がうまくいかない際にはCrysAlisProへと戻り、ツイン処理を行っていただければと思います。

 

Q3 : 非欠面性双晶の場合の吸収補正の方法を教えてください。

A: ツイン処理を行うと、画面左のアイコンの列からツインのFinalize画面を開くことができます。Finalize画面のABSPACKを押すことで吸収補正の設定ウィンドウが表示されますので、Empirical Absorption Correctionの項目から設定してください。Finalizeの吸収補正については第4回のP38に詳細がございます。

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Q4 : 31枚目で、HKLF5に変換すると、Rintの値が悪くなっていたような気がしますが、この点はいかがでしょうか。

A: ツイン処理を実施するとメイン成分の反射データがHKLF4フォーマットに記録され、HKLF5フォーマットにはマイナー成分の情報も含んだ反射データが記録されます。ふつうマイナー成分の方がデータの質が悪いので、HKLF5フォーマットへと変換した際にRintが悪くなることがあります。 ツイン結晶であっても、メイン成分のHKLF4フォーマットのみでcompletenessが足りている場合はHKLF5フォーマットのデータは使用せず、通常の単結晶と同様に解析していただいて構いません。

 

Q5 : HKLF5でTWIN処理をした際、解析後Rintの値がCIFに記入されないのですが、どのように対処すれば良いでしょうか。

A: ツイン処理を行ってHKLF5フォーマットで解析を行うと、Rintの値がCIFに記入されなかったり、変な値になることがあります。この場合は、データ処理後に作られる"xxx_hklf5.cif_od"ファイルの中の"_diffrn_reflns_av_R_equivalents"の項目を確認し、コピーしてCIFに貼りつけるようにしてください。

 

Q6 : その結晶がTwinであるかどうかを知る手段として、外観の確認や構造解析以外の方法がありますか?(XRD等の光学的な分析をした段階で分かることはありますか?)

A: 非欠面性双晶の場合は、外観の確認の際に偏光顕微鏡で結晶を確認する方法があります。第2回のP41にて偏光顕微鏡について触れていますのでご確認ください。

 

Q7 : checkCIFにおいてオンラインとオフラインで実施する内容に違いはありますか。

A: ウェブページ上のオンラインcheckCIFとPLATONを使用したオフラインのValidationは、根幹となるチェックの内容については基本的に同じです。しかし、オンライン版の方はPLATONのチェックに加えて追加でIUCr独自のチェックがされるため、チェック項目が少し多くなっています。

 

Q8 : 測定前の結晶外形の写真にて、光が強すぎたり暗すぎたりピントがあわなかったりと結晶外形がうまく視認できません。結晶の外形取得のコツなどあれば教えてください。

A: マウント画面のLightsボタンを押すと設定ウィンドウが表示されます。Sample lightsの項目にあるSampleやGonio、Ceiling lightsの項目にあるCeilingを調整することでキャビネット内の光量を調整することが可能です。 光量を変更してもピントが合わずにうまくいかない場合は、リガクサービスへご連絡ください。

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