概要:
第5回では回折測定が完了した後、構造解析をどのように進め最終構造にたどり着くのか、その大まかな流れについて説明します。
前半は構造解析のプロセスの中でも、最も比重の大きい作業である精密化について説明し、精密化に用いられる重要なパラメーターに関する説明を行います。
後半では構造解析から得られる結果の確認と、CIFおよびレポートに関する説明を行います。
Q&A:
Q1 : olex2でのsolveタブで選択できる「ShelexTやOlex2」など、どのツールを選択してsolveすればよいですか? ▽のタブで、いくつか選択できると思います。
A: SHELXT:多くの場合でファーストチョイスとして頂いて問題ございません。ただし、空間群を自動で再評価するため、望まない空間群へ自動変更されてしまうことがあります。
SHELXS:一世代前のものです。SHELXTで構造が得られない場合や、空間群を変更したくない場合に、ご活用ください。
SHELXD:軽元素(CHON)からなる中分子に強いプログラムです。Sと同じ使い方も有効です。 Olex2.solve:SHELXプログラムをお持ちでない際にご活用ください。
Q2 : Qピークにおける「正or負の電子密度」はどこで確認できますか?
A: キーボード上の「Ctrl+M」を押すと、差フーリエマップを確認することが可能です。緑色のマップで表される正の電子密度が残っている場合は、アサインされた原子よりも原子番号の大きい原子をアサインし直します。逆に、赤色のマップで表される負の電子密度が残っている場合は、アサインされた原子よりも原子番号の小さい原子をアサインします。
Q3 : EXTIのチェックは毎度入れておくものですか?
A: EXTIのチェックボックスはチェックしたままにしていただいて構いません。ただし、EXTIをチェックし精密化を行った後に「Shift/Errorが0に収束しない、EXTIの値が標準偏差よりも小さい」という場合にはEXTIが機能していないためチェックを外すようにしてください。
Q4 : Flackパラメータが0.5のときは、どのようなことが言えますか?
A: キラル化合物の場合は、それぞれのエナンチオマーが1:1の比率で含まれているラセミ双晶であることを示しています。
Q5 : 吸収補正で、「線吸収係数」はどこで確認できますか?また、経験的吸収補正対象でも、毎回「外形補正」を行えばそれでよいということはありますか?
A: CrysAlisProにて正しいZ値と組成式の入力がされていれば、[Crystal]メニュー右横の小矢印から"Edit chemical formula"もしくは"Show crystal view"を選択することで線吸収係数を確認可能です。しかし、解析前には正しいZ値や組成式が分からない場合もあると思います。そのような場合には解析後にCIFの"_exptl_absorpt_coefficient_mu"の項目で確認することが可能です。 外形補正の利用については、まずは経験的吸収補正のみを実施したデータを解析することをお勧めします。その際に重原子の周りにピークが残ってしまうなどの問題がある場合には外形補正を追加で実施し、再度構造解析していただくのがよいです。
Q6 : 解析後に空間群が間違っていることが判明した場合、どのように精密化に反映させるか、具体的な手順が知りたいです。
A: 空間群の間違いが判明した場合、基本的にはCrysAlisPro上で正しい空間群に基づいてデータ処理をし直し、再度構造解析を行っていただくのが最も確実です。
Q7 : 精密化に用いるソフトウェアとして Olex2.refine と SHELXL が選択できますが、どのように使い分ければよいのでしょうか。
A: 通常の単結晶構造解析を行う上では、基本的にはSHELXLを使用していただければ問題ありません。
Q8 : Weight にチェックを入れてもGooF が1から遠い値を取る場合、どのように荷重を変更するのが良いのでしょうか。
A: 構造解析の序盤でWeightにチェックを入れてもGooFが1に近づかないことが多くあります。特に、結晶溶媒が置けていないなど、残渣電子密度が大きい場合には1に近づきづらいので、それらを置いた上でチェックを入れていただければと思います。
Q9 : 結晶学に明るくないのですが、双晶や対称中心の有無等についてはどのように学習すればよろしいでしょうか。
A: 双晶や対称中心の有無については本講座の第8回にて触れておりますのでご確認ください。また、スライド中で紹介した参考書等も活用していただければと思います。
