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医薬品開発を支える粉末X線回折シリーズ #1. 透過法のすゝめ - ”試料全体”を見る医薬品のX線回折測定

概要:
粉末X線回折で医薬品を測定するとき、「反射法ではうまくピークが出ない」「反射法と透過法の使い分けが分からない」と感じたことはありませんか? 粉末X線回折測定で一般的に用いられる反射法では、配向や試料表面の状態の影響により、正確な回折パターン取得が難しい場合があります。

本ウェビナーでは、これらの課題を解決する「透過法測定」に焦点を当て、その原理から反射法との違い、さらに医薬品試料を対象とした実測データを交えてわかりやすく解説します。透過法の基礎を一度に学べる内容で、これから医薬品の粉末X線回折測定を始める方や、再現性の高いデータ取得を目指す方に最適です。

このセミナーで学べること

  • 透過法の原理
  • 透過法のメリット

こんな方におすすめ!

  • 医薬品の粉末X線回折測定が初級レベルの方
  • 再現性の高いデータ取得を目指す方

Q&A:

Q1: 医薬品を透過法で測定する際のデメリットとして、吸収があること以外ありましたら教えてください

A: フィルム透過法での測定の場合、アタッチメントにより回折X線が遮られるため、測定角度範囲が反射法よりも狭くなります。そのため、2θ:60°以上の高角側まで測定する場合は、キャピラリー透過法、もしくは反射法を選択する必要があります。

また、フィルム透過法は試料をフィルムで挟むだけのシンプルな充填方法であり、数mgから数十mgまで充填することができます。充填量に自由度があるため、ピーク強度が再現しにくく、ピーク一本の積分強度から算出する検量線法などの定量分析は難しくなります。フィルム透過法で測定する場合は、充填する前に試料の重量を測定し、いつも同じ量の試料を測定することをお勧めします。

 

Q2: ご説明ありがとうございました 序盤を聞きそびれたので説明されていたら申し訳ないのですが、今日の説明を聞くと透過法が全面的に優れていて、反射法の優れているところはなさそうな気もしたのですが、その理解で良かったのでしょうか?

A: 反射法は、有機化合物から無機化合物、厚みのあるバルク材料、薄膜など幅広く測定することができます。 特に集中法光学系は分解能と回折強度をバランス良く簡単に測定できるため、様々な分野で粉末試料の材料評価によく用いられています。一方で、本編でもお伝えした通り、医薬品に含まれる有機化合物は配向しやすいものが多く、本編でも測定例をご紹介したホウ酸のように、配向すると決まった指数のピークのみが観測され、他の指数のピークがほとんど見えなくなるような試料の場合などは、反射法の結果のみでは多形判定などデータを見誤る可能性もあります。

透過法のメリットは、配向の緩和、偏心による角度誤差の低減、試料内部の情報の取得が可能な点です。 そのため使い分ける際の基準としては、配向が生じやすい試料のプロファイル測定や結晶相同定を行う場合は、透過法を推奨します。ただし、検量線による定量分析や結晶化度解析の場合は、透過法よりも反射法の方が適しているなど、解析方法によっても手法を選択する必要があります。 そのため、測定・解析の目的に応じて、反射法・透過法を選択していただくのも良いかと思います。

 

Q3: 反射法を用いるメリットなど、反射法と透過法を使い分ける際の基準や考え方はありますか?

A: Q2の回答をご確認ください。

 

Q4: 実験を進める際に、基本的には反射法を選択し、反射法にて測定が難しい物質については透過法を選択するというのが良いのでしょうか?

 A: Q2の回答をご確認ください。 

 

Q5: 選択配向がない場合でも、反射法と透過法の光学系の違いによる低角側と高角側の強度比の変化は生じますか?

A: 選択配向がない場合でも、反射法と透過法の光学系の違いにより、低角側と高角側の強度比が変化することがあります。 反射法(集中法)では、入射角 θ が大きくなるにつれて試料表面でのX線照射エリアは狭くなりますが、X線の侵入深さは深くなります。吸収係数の大きな無機材料などでは照射体積がほぼ一定となる条件で測定が行われますが、吸収係数の小さな有機物の場合、X線がホルダー底部まで到達することがあり、この場合は照射体積一定の条件が成り立たず入射角によって照射体積が変化します。

しかし、透過法では入射角は固定して測定を行うため、回折角によらずX線の照射体積は一定です。この照射体積の変化の違いにより、透過法と反射法ではピークの強度比が変化します。 また、反射法(集中法)のような対称スキャンと、透過法のような非対称スキャンでは、試料によるX線吸収の影響が異なります。 これらの理由から、選択配向がない場合でも、測定法の違いにより回折ピークの強度比が変化することがあります。

 

Q6: CBO-E素子での透過法でも同様の測定が可能でしょうか。それとも写真のような上側X線源、下側検出器の透過配置構成が必要でしょうか。

A: CBO-Eのミラーをお持ちであれば、集光ビーム光学系での透過測定は可能ですが、セミナー本編でご紹介したフィルム垂直透過での測定はゴニオメーターが垂直透過配置に対応している必要があります。キャピラリー測定の場合、水平透過配置で測定するため、垂直透過配置させることなく測定することが可能です。

Q6_キャピラリー測定と水平透過装置

 

Q7: 透過法測定時の光学系はどのようになっていますか?PB,BB最適なのはどちらでしょうか?

A: Bragg-Brentano疑似集中光学系(BB)は反射配置での測定に限定されているため、透過法の測定の際は、平行ビーム法(PB)もしくは集光ビーム法(CB)のどちらかを使用します。 右下図のように集光ビーム法ではX線が検出器の検出面で集光するようになっているため、高強度で、2θ: 60以下の角度領域では平行ビーム法よりも高分解能な測定が可能です。 そのため、比較的低角度域にピークが見られる有機物に対して高強度、高分解能な透過法測定を行うにはCB光学系が最適です。

Q7_ビーム法図と比較

 

Q8: キャピラリーのサンプリングが難しいです。コツなどはありますでしょうか?

A: 粉末試料の充填方法に関する動画がありますので下記ご参照ください。芯を抜いたボールペンを使用した試料の充填方法をご紹介しています。 (1分53秒あたり) また、粘度が高く充填が難しい場合はキャピラリー径よりも細いガラス棒で粉末を押し込むことで、充填する方法をとることもあります。

「キャピラリーへのサンプル充填方法」 https://www.youtube.com/watch?v=RBWYYwYZ1rY&t=250s

 

Q9: 毒性が高い医薬品サンプルを測定しており、気密試料ホルダーを使用しているのですが、透過法での測定はどのように行えばよいのでしょうか?

A: 透過法に対応した気密試料ホルダーは販売しておりませんが、毒性が高い試料の透過法での測定方法として2つ紹介します。1つ目はキャピラリーで封止する測定、2つ目は使い捨てホルダーでの測定方法です。1つ目のキャピラリーによる測定では、グローブボックス内で試料を充填・封止することで、気密状態を保って測定することができます。また、2つ目の使い捨てホルダーは、使い捨ての樹脂製のリングとフィルムを使うことで、測定から廃棄まで試料を大気暴露させずに測定することができます。

Q9_気密試料の比較

 

Q10: Rigakuのガラスホルダーを持っています。0.5mmのホルダーにはどのくらいの量の試料が必要でしょうか?

A: 弊社が標準で販売している深さ0.5mmガラス試料ホルダーには、20×20mmの角型の試料ホルダーと、ASC用のφ18mmと9mmの計3種類ございます。 粉末試料の充填密度が圧力や粒径によって異なりますが、この溝の体積を埋めるだけの試料量の目安は、有機物の場合およそ数十mgです。

Q10_ガラス試料ホルダー.

 

Q11: 粉末のすりつぶしについて、どこまですりつぶせば良いかの判断が人によって統一できないです。良い判断基準はありますでしょうか?

A: 粉末X線回折測定を行うときは、粉末粒子を数μmから50 μm以下のサイズに調製することを推奨します。分かりやすく表すと、50 μm以下の粒子とは、人が指で触って粒を感じないくらいのサイズです。 ただし医薬品試料の場合は、過度な粉砕により、メカノケミカルな反応が起こり、結晶性が低下する可能性があります。 したがって、粉砕した試料を用いる際は粉砕前後のプロファイルを比較して粉砕による影響がないことを確認することを推奨します。 また、粗大粒を含む試料の場合はメッシュ(200番、70μm程度)に通す方法も有用です。メッシュを通った試料を用いることで、細かく均一な粒子のみを測定することができます。

 

Q12: 原薬の内部成分を捉えた事例について、透過法では内部を見ることが出来るものの、反射法で出ていたタルクなどは透過法ではノイズ?で検出できていない様子でした。両方の測定を組み合わせることが大事、ということでしょうか。

A: 得たい情報が錠剤の表面か内部かによって測定手法を選択することは重要です。 錠剤表面に微量に存在する結晶相を同定する場合は、反射法を用いることで錠剤表面の結晶相を感度良く検出することができます。 本編でお話しした反射法でのプロファイルで観察されたタルクなどは、表面のみに存在したため錠剤全体から見れば含有量が少なく、透過法のプロファイルでは強いピークとして確認できていなかったと考えられます。 透過法での測定でも、スキャン速度を落として測定することで、数%のコーティング剤由来の微小ピークも明瞭に観察することができます。

 

Q13: 透過法ではバックグラウンドが高くなるように見えますが、測定条件でバックグラウンドを低くすることは可能ですか。また、透過法で測定したデータでリートベルト解析を行うことは可能でしょうか。

A: ダイレクトビームストッパーや散乱プロテクターなどの散乱カットパーツを使用することでバックグラウンドを低くすることが可能です。 また、キャピラリー透過法の場合は、キャピラリーの材質を変更することでもキャピラリー由来の散乱強度を低くすることができます。ソーダガラスやクオーツガラスよりも、ボロシリケートガラスやリンデマンガラスのほうが、キャピラリー由来の散乱強度(バックグラウンド強度)を低くすることができます。 透過法で測定したデータを用いたリートベルト解析は、測定条件や試料状態によっては可能です。

 

Q14: 96ウェル測定では、微量試料でも再現性は確保できますか?

A: 96ウェル測定における再現性は、試料の粒径に依存するため一概には言えません。しかしながら、再現性を高めるための工夫は可能です。 96ウェル反射/透過アタッチメントでは、測定中に試料を揺動させることができます。試料を揺動することで、粗大粒の影響を平均化し、微量試料であっても再現性の高い測定が可能になります。 さらに、揺動だけでは影響を十分に抑えられない場合には、入射角度を変えて複数回測定し、それらのプロファイルを足し合わせることで、粗大粒の影響をさらに低減することが可能です。

 

Q15: 透過法で2θ=40°以上の高角度を確認したい場合はどうしたらよいでしょうか?

A: フィルム透過やウェルプレートでの測定でも2θ: 60°程度までは測定可能です。また、キャピラリー透過法であれば60°以上も測定が可能です。 2θ: 60°以上の場合はCB光学系よりもPB光学系の方が分解能が高くなります。

 

Q16: 偏心誤差のピークシフトの式で、反射法だけが分子に2がかけられているのは、2θ/θスキャンしているためでしょうか。それとも別の理由でしょうか。

A: 下図に反射法、透過法それぞれの偏心誤差の式の導出を示しますので、こちらをご参照ください。

Q16_反射法の説明

Q16_透過法の説明

 

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