選択配向解析

 粉末X線回折法では、測定試料の準備として、粉末の試料表面を平坦にし、試料ホルダーと高さが揃うように摺り切り充填を行います。試料の結晶粒が針状や板状などの異方性を持つ場合、充填時に特定の格子面が優先的に揃う現象が起こります(図1)。これを選択配向と呼びます。選択配向が生じると、X線回折パターンの回折ピーク強度比が本来の値(またはデータベースの値)と異なり、特に積分強度を用いる定量分析の正確性に影響します。 

 この影響を補正するため、リートベルト解析などの全パターンフィッティング(WPPF)法では、選択配向による強度の偏りを考慮する機能が一般的に用いられます。適切な補正により、選択配向の影響を軽減し、より正確な結晶相の定量分析が可能となります。

 また、選択配向の有無は、2次元検出器で取得したデバイリングの画像やロッキングカーブ測定で確認できます。無配向試料ではデバイリングの強度が均一に分布していますが、選択配向があるとリングの強度が偏り不均一なパターンが観察されます(図2)。また、ロッキングカーブ測定では、特定の回折角度で試料の入射角(ω)を変化させながら回折強度を取得し、結晶方位の揃い具合を調べます。無配向試料はω依存性がない一定の強度プロファイルを示しますが、選択配向があると特定のω角で急激に強度が増加します。ただし、ロッキングカーブ測定の選択配向に対する感度は比較的低いとされています。

 試料調製時に選択配向を抑える工夫も重要ですが、適切な補正により定量分析の正確性を向上できます。特に、セメントや粘土鉱物など配向しやすい材料の分析では、この補正が極めて重要です。

Preferred orientation analysis_figure1

 

preferred orientation analysis

アプリケーションノート

以下のアプリケーションノートは、この分析手法に関連しています。

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