発生ガス分析
発生ガス分析(EGA; Evolved Gas Analysis)は、試料を加熱する際に放出される揮発生成物(発生ガス)をリアルタイムで分析する手法です。この分析により、発生ガスの種類(定性分析)とその発生速度(速度論的解析)を同時に把握することが可能であり、反応のメカニズムや反応速度に関する詳細な情報を得ることができます。EGAは粉末、フィルム、ブロック、液体など、様々な形態の試料を分析できます。
図1 EGAの装置構成
EGA装置には図1で示したように3つの構成要素で構成されます。
- 加熱部: 試料を制御された条件下で加熱し、ガスを発生させます。
- インターフェース部: 発生したガスを凝縮や変質させることなく検出部まで輸送する役割を担います。
- ガス検出部: 発生したガスの検出と定性分析を行います。
特に、加熱部に熱重量測定装置(TG)や熱重量-示差熱分析装置(TG-DTA、TG-DSC、またはSTAとも呼ばれる)を使用し、ガス検出部に質量分析計(MS)やフーリエ変換赤外分光計(FT-IR)を組み合わせたシステム(TG-MS、TG-FTIR)が一般的によく知られています。これにより、試料の重量変化と同時に発生ガスの定性分析が可能となり、反応生成物の詳細な情報を得ることができます。TG-MSやTG-FTIRは加熱によって試料に起こる反応をより総合的に解析する分析環境を提供できます。
EGAは多岐にわたる分野で応用されています。以下にいくつかの具体例を示します。
■ポリマー・化成品:ポリマー材料の熱分解挙動の研究に使用されます。例えば、ポリマーの加熱によって放出されるガスを分析することで、分解温度や分解生成物を特定し、材料の安定性や劣化メカニズムを理解することができます。
■環境分野:土壌などの環境サンプルを加熱し、放出される揮発性有機化合物(VOCs)を検出することで、汚染源の特定や汚染レベルの評価が可能です。これにより、環境保護や汚染対策に役立てることができます。
■医薬品:原薬の溶媒和物や残留溶媒の確認を目的にEGAが使用されます。また、医薬品を加熱し、分解時に放出されるガスを分析することで安定性を評価し、薬物の保存条件や有効期限を設定するのに役立ちます。
以上のように、EGAは非常に多用途であり、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

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