世界のリガク vol.2

リガクの先端技術はグローバルに必要とされており、リガク社員は世界中でテクノロジーの発展に貢献しています。
第2弾となる今回は、2022年6月からRigaku Americas(米国)に出向し、米国放射光施設 Advanced Photon Source (APS,シカゴ)でVisiting Scientist - Advanced XSPA Detector Applications -として活躍する中江 保一さんをご紹介します。
【Q】現在の業務内容を教えてください。
【A】次世代検出器開発の為の情報収集及びデモ実験によるユーザーからのフィードバック収集,学会/セミナー等への参加によるユーザーとの技術交流,APSでの放射光制御システムへの検出器の組み込み支援を主に行っています.
職場となっているビームラインの写真
【Q】駐在することになったきっかけ、経緯を教えてください。
【A】 APS Upgrade による2桁の高輝度化による,各種高速アプリケーションへのニーズ増加に向けて現時点で連続撮像では世界最速の検出器であるXSPA検出器シリーズの開発元として,新規応用の検討と測定方法確立の為の共同プロジェクトが採択され,現地に派遣されることとなりました.
【Q】業務の中で、やりがい・達成感を感じること、困難に感じていることを教えてください。
【A】
ー やりがい・達成感を感じること
日本にいると国際学会で会った際以外に行うことが難しいですが,他の検出器開発グループの方と話をする機会が増えたことで次世代検出器開発に求められる性能や,増大していくデータ処理コストにどう対処していくのかがリアルタイムで感じられるようになったことです.APSを訪問する他の放射光施設の検出器グループやソフトウェアグループとのミーティングにも参加させて頂き議論に参加できるのは得難い経験であると感じます.
ー 困難に感じていること
コロナ禍の煽りを受けてアップグレード予算が縮小されたり,アップグレード後の施設の再立ち上げが予定から大幅に遅れたりといった,外的要因によって派遣の目的の一部がなかなか達成できないというもどかしさは有ります.
【Q】駐在先オフィスの雰囲気や、生活圏の様子、日本との違いについて教えてください。
【A】
ー 駐在先オフィスの雰囲気
最初の1年半はAPS検出器グループに間借りしておりました.同一建物内ですが,今年に入ってからXSPA-3M検出器のインストール先グループのオフィスに移動しました. コロナの影響が緩和してきてからは,議論のためにオフィスにきてくださる人も増え,メールで改めて問い合わせるほどではない小さな疑問でも議論のきっかけとなることもあり,現地駐在のメリットを実感しています.
職場の敷地内で道路を渡っている鶴の親子
ー 生活圏の様子
住んでいる地域は大都市シカゴの郊外ですが,あらゆる施設間が車で10分,20分掛かってしまう距離であり,2, 3用事をしに出かけるだけで1時間以上車に乗らないといけないという環境に慣れるまで少し時間がかかりました. その分自然が多く,住んでいるアパートの周辺でもリス,野兎,鹿,コヨーテ等の野生動物を見つけることができます.ただ,雪こそ少ないものの冬の寒さは厳しく-20℃前を下回ることも有ります.
ー 日本との違いについて
医療費も物価も日本の2-3倍しますし,歯科でクリーニングを受けようと思うと400-500ドルかかってしまうと言われたのは衝撃的でした.もちろんお断りし,一時帰国時に日本でクリーニングを受けました. 他にも医療制度の違いには色々と戸惑いました.直接耳鼻咽喉科にはかかるごとができず,まずはホームドクターを決めて推薦状をもらい,もらっても予約して実際の診察までには1月以上,診てもらう頃には症状はなくなっていたというようなことも有りました.
【Q】休日は何をして過ごしているか教えてください。
【A】シカゴは博物館や美術館が多く,中でも科学と工業の博物館,自然史博物館は何度も訪問しています.
息子と自然史博物館で恐竜の骨を見ている様子
【Q】最後に、駐在中に実現したい夢や目標について教えてください。
【A】検出器開発において,最も苦労していることの一つが,共同実験先の確保です.リガクはX線装置の総合メーカーですので,当然ながら,大抵のことは社内の装置,部署間の協力で実施できます.しかし,例えラボ用の検出器であっても,その性能を担保するためにはラボ装置では実現できない輝度,測定速度域での挙動を検証しておかなくてはいけません. そのために,放射光施設,大学等の先生方に協力をお願いし,検出器の性能実証実験を兼ねた実験をする必要があります.そのためも必要な人脈を作るべく活動しています.
中江 保一さんのバックグラウンドをご紹介

大学・大学院では材料工学を専攻し,X線半導体検出器の研究を行っていました.特に,易動度の低い半導体での信号処理による検出器性能の最大化などを行っていました. リガク入社後も12年,HyPixの開発から2次元半導体検出器の開発に携わり,これまでの知識を活かして開発設計業務に携わってきました.
2016年10月から2年間,ポーランドのクラクフに駐在しROIC設計のノウハウを学ばせていただきました.2次元検出器の読み出しチップに関する知見を得ることで,センサと読みだしチップを含めたアナログ部分の挙動に対する理解を元にXSPA検出器の開発初期段階から,各種調整方法や最適化に尽力してきました.
