医薬品分析シリーズ #6. 電子回折装置XtaLAB Synergy-EDの医薬品開発への活用

概要
製薬の研究開発に携わる皆様、リード化合物や原薬の絶対配置、未知の結晶多形や微量不純物など、構造決定にお困りではないですか?その課題、電子回折で解決できるかもしれません!結晶多形や絶対構造の決定に最も有力な手法といえば単結晶X線構造解析ですが、大きな結晶ができない、試料量が少ないなど、適用が難しい場合があります。しかし電子回折を用いれば、1μm以下の粉末試料からでも結晶構造解析ができます。本セミナーでは、電子回折構造解析装置XtaLAB Synergy-EDを使った構造解析の原理や基本的な測定手順、絶対配置を含めた構造決定の実例について紹介します。さらに、ゲストとしてスペラファーマ株式会社の中井様をお招きし、結晶多形分析や製剤中の有効成分の直接構造解析など、より製薬研究の現場に密接した内容をご紹介頂きます。

このセミナーで学べること
  • 電子回折構造解析の原理
  • 電子回折を用いた分子の絶対配置の決定法
  • 電子回折を用いた製剤中の有効成分・結晶多形の構造決定法
こんな方におすすめ!
  • 創薬研究に関わっている方
  • 製剤開発に関わっている方

Q&A:

Q1: タンパク質結晶の位相決定は、分子置換法のみになりますか?

A: 基本的には分子置換法を使った位相決定を行います。現在であれば、結晶構造未知の蛋白質についてはAlfafoldによる構造予測を活用する場合が多いです。

 

Q2: 例えばフェキソフェナジンの場合、どれだけの個数の結晶を測定し、どれくらいのデータをマージしたのでしょうか。

A: フェキソフェナジンの結晶は、結晶1個からのデータで十分な構造解析が行えました。

 

Q3: X 線と同じように温度条件の検討もできるのでしょうか。

A: TEM用の加熱・冷却ホルダーをそのまま用いることができます。ただし、X線の吹付低温装置に比べると温度を安定させるのに少し時間がかかります。

 

Q4: 水和物(有機物)も測定可能でしょうか?

A: 水和物の有機結晶でも測定可能です。ただし、電子回折は真空下で測定を行いますので、結晶によっては水和水が抜けて結晶性が失われる可能性があります。そのような場合は、クライオホルダーを用いて低温測定を行うことで水和水の喪失を抑制できます。

 

Q5: Queue 機能のところで試料の定量評価に触れられていましたが、具体的にはどのような定量評価ができますか?

A: Queue機能で多数の結晶を測定し、クラスタリング機能で分類することで、医薬品の多形混合物や微量不純物などを半定量的に評価することができます。ただし、あくまで「結晶の個数」の評価であり、結晶の体積は無視していますので、完全な定量性はありません。

 

Q6: dynamical effectを考慮した精密化ができるolex2はjana2020とどこが違いますか?また、olex2のβ版は入手可能ですか?

A: どちらも電子回折の多重散乱の効果を取り入れて精密化できるという点では同じですが、細かいプログラムの差異により若干R値等には差が出ます。Dynamical refinement機能を搭載したolex2のライセンスは、現状はXtaLAB Synergy-EDのユーザー様のみへのご提供となっております。

 

Q7: 粉末X線で結晶多形の解析を行うと思いますが、MicroEDとの違いは何になりますか?

A: 粉末X線回折で結晶多形の解析(帰属・定量評価)を行う場合には、その多形の結晶構造が既知である必要があります。一方、MicroEDでは、結晶一粒一粒を見て直接結晶構造を得られるため、未知の多形でも構造がわかるという違いがあります。ただし、定量性という面では粉末X線回折に分がありますので、未知の結晶多形混合物に遭遇した際には、「MicroEDで試料に含まれている全ての結晶多形の構造を明らかにする」→「粉末X線回折でバルク試料の定量評価を行う」という使い方が良いと思います。

 

Q8: 1回の測定時間はどのくらいかかるのでしょうか?結晶の混ざりがあるか確認するため,多数のポイントでデータ取得したい時にどのくらいの時間を見込めばよいのかな,と思いまして。

A: 結晶1個あたりの測定時間は1-5分程度です。Queue機能を用いた多点測定を実施する場合は、測定前に結晶の自動センタリング(2分程度)を行いますので、その場合には1個あたり3-7分程度ということになります。

 

Q9: X 線の方が優れている点もあるのでしょうか。

A: 現状では、得られる構造解析データの質としては単結晶X線の方が優れていると言えます。結合長、結合角、格子定数などの細かな差を議論したい場合には、MicroEDでは精度が不足する場合があります。

 

Q10: FIBでの加工は結晶がダメージを受けそうに思いますが、何か条件を工夫されているのでしょうか?

A: FIB加工を行う際には熱が発生しますので、蛋白質結晶のような安定性に難がある結晶の場合は、クライオ条件で加工を行います。

 

Q11: 分子量の大きなニトロソアミンは固体かもしれませんが、低分子量の未知ニトロソアミンは固体より液体やオイル状のものが多いような印象があります。そのようなものでもmicroEDで構造決定できるとのでしょうか。あるいは固体として取得できるものが前提でしょうか。

A: MicroEDを用いた構造決定では、基本的には常温で固体として得られる試料が対象となります。液体・オイル状の試料については、結晶スポンジ法と単結晶X線構造解析を組み合わせることで解析できる可能性があります。

 

Q12: 天然物の構造解析においては、微量であったり混合物であっても、理論上MicroEDによって絶対立体配置の決定が可能という認識でよろしいでしょうか?

A: 微量であったり混合物であっても、微小な結晶にさえなっていればMicroEDで絶対配置の決定が可能です。ただし、混合物のままでは結晶になりにくい傾向がありますので、できれば単離精製を行っていただくことをおすすめします。

 

Q13: 試料は透明(澄明)である必要はあるでしょうか.

A: MicroEDでは光学顕微鏡では観察が難しいくらいの大きさの結晶を対象にしていますので、肉眼や光学顕微鏡下で透明に見えている必要は必ずしもありません。もちろん、着色の有無も問題ありません。

 

Q14: 試料の結晶性も様々かと思いますが、これまで、どの程度の分解能まで回折が出たら構造解析可能でしたでしょうか

A: 一般には、電子回折の場合でも分解能1.0Å程度まで回折が出ていれば直接法による構造決定が可能とされています。

 

Q15: これまで回折データが取得できたけれど、構造決定ができなかったケースはありますか?

A: 様々な原因により、回折データの取得には成功したものの構造解析ができなかったケースはあります。MicroEDに特有のケースとしては、平板状の結晶がグリッド上で特定の方位に配向してしまい、データマージを行っても十分なcompletenessが得られない場合があります。

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