医薬品分析シリーズ #3. 蛍光X線分析による医薬品分析の基礎

概要:
医薬品の品質管理において、元素分析は欠かせません。蛍光X線分析は、医薬品中の金属不純物や添加成分を迅速・非破壊で測定することができます。ICP-AES、ICP-MSなどの従来の手法では、試料の前処理が必要であるという課題がありました。特に、重金属の管理や異物分析では、効率的かつ高精度な分析が求められています。

本セミナーでは、これらの課題を解決する測定方法として蛍光X線分析に焦点を当て、その基礎原理から応用例までを解説します。XRFは、前処理なしで医薬品の元素組成を迅速に分析することができ、品質管理の効率化に大きく貢献します。特に元素不純物の測定などの最新の活用事例をご紹介します。

このセミナーで学べること
 ・蛍光X線分析の基礎
 ・医薬品の測定例の紹介

こんな方におすすめ!
 ・蛍光X線分析装置の導入をご検討の方
 ・これから医薬品の蛍光X線分析を始める方

Q&A:

Q1: 蛍光X線、ICP-MS、ICP-OESはどのような位置づけになるのでしょうか。また、感度、特異度を考えると左記分析法の優先順位をご教示いただけないでしょうか?また、蛍光X線が局方から除外され、バリデーション必須となっているについてご教示いただけないでしょうか?

A: 元素不純物の分析に要求される検出感度の点において、ICPは理想的な測定方法と考えられています。一方、XRFは一般試験法に未収載で認知度が低く、検出感度もICPに劣ることなどから、当初から指定手法として検討されていなかったと想像されます。しかし、簡単な試料前処理のみで短時間に測定結果が得られることから、装置稼働やランニングコストを低減の点においては理想的な測定方法であり、目的に応じ取り入れられるよう日本薬局方への収載が検討されています。

 

Q2: 妨害元素(物質)が多い場合、ICP-MSの方が前処理を行っていることから、蛍光X線よりも優れているのでしょうか?

A: XRFによる元素不純物の分析では主成分が有機物であるため蛍光X線ピークの重なりの影響は小さく分析結果にはほとんど影響しません。

 

Q3: 検量線ではなくFP法でも元素不純物は測定できますか

A: 測定可能です。検量線法もFP法も同じ測定条件により得られた結果であれば、測定強度は同等であり分析精度と検出下限は同等です。

 

Q4: 粉砕することはないのでしょうか。粉砕時に容器に固着した場合は、粉砕助剤などは使うのでしょうか。粉砕助剤はどういったものになりますでしょうか。

A: 医薬品関連試料は有機物が主成分であるため、粉砕助剤を使用せずに粉砕が可能と思われます。メノウ乳鉢等を用い手作業で粉砕することが多いと思われますが、容器への試料の固着はあまり問題にならないように思います。鉱物等の試料を粉砕機を用いて粉砕する際には容器に固着する場合もあるかと思います。通常、成形助剤として使用するセルロースやステアリン酸、ワックス系パウダーが粉砕助剤として用いられる場合もあります。

 

Q5: FP法の定量誤差はどれくらいですか。

A: 試料内の含有元素が均質で、測定面がフラットなほどより理想的な試料形状であり分析結果も正確です。そのため蛍光X線分析用の標準物質を測定した場合では標準値に対し、だいたい相対的に10%程度以内の誤差となります。検量線法のように測定試料に近い標準試料で感度較正することで、正確さが改善します。

 

Q6: 例にあったAsPbCdHgの測定について,検量線には何を使用しているのでしょうか。

A: 測定例で使用した試料はセルロース粉末にICP用の標準液を混合し、調製したものです。

 

Q7: 先代機であるNEXCGで元素不純物のPDE値より算出した許容濃度を満たすことは可能でしょうか。

A: より低濃度の測定が要求されるCdやPbにおいて、測定時間を長く設定することで検出下限1 ppm以下まで到達します。

 

Q8: 20枚目の右側のグラフですが、マトリックス中の軽元素からの散乱によりベースラインが上がっています。 FP法により100mass%となるよう分析値を計算していると思うのですが、マトリックスの種類が変わっても(軽元素による散乱強度が変わり、ベースラインの上がり方が変わっても)、測定値に問題はないのでしょうか。

A: FP法の場合、ピークプロファイルの自動解析の過程でバックグラウンドもフィッティングの際に考慮されており、測定結果には大きく影響しません。

 

Q9: 測定範囲がNaからですが、FP法の場合、医薬品の主成分である炭素はどのように扱いますか?

A: 主成分が有機物など非測定成分の場合は、バランス成分(残分)として扱います。例えばセルロースならC6H10O5を化合物として予め追加し、その化合物をバランス成分として定量計算します。

 

Q10: FP法による測定結果は社外情報として提出できるものでしょうか。

A: FP法による測定結果は、企業間の合意のもとで使用されることがございます。

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