アプリケーションノート B-XRI1031
はじめに
セメント内部の空隙は、強度や耐久性に大きく影響を与えます。そのため、配合設計・評価・品質管理の各工程において、空隙の非破壊分析が行われています。X線CTはその代表的な手法ですが、セメントのCT撮影において、例えばφ100 mm、高さ200 mm以上の大きさの試料を撮影する場合、設置可能な試料サイズやX線のエネルギーが課題となります。本稿では、広い試料室と高エネルギーのX線を使用できるCT Lab HVを用いてφ100 mm程度の円柱状のセメント試料の撮影を行い、内部の空隙サイズを解析しました。さらに、セメントのCT撮影におけるX線のエネルギーの重要性を示すため、低エネルギー(低電圧)での撮影も実施しました。
測定・解析例
画素サイズ40 µm、撮影時間4分にて、高電圧の条件A (225 kV) と低電圧の条件B (100 kV) のCT撮影を行いました。断層画像 (図1) では、いずれの条件でもセメント内部の空隙 (黒色) を確認できました。AではX線のエネルギーが十分で、空隙の輪郭が明瞭でした。こちらはビームハードニングの影響が無く、試料全体の明るさが均一に保たれていました。一方でBはX線のエネルギーが不足しているため、空隙の輪郭が不明瞭でした。また、ビームハードニングによる影響で試料中心部に暗い領域が生じています。
図1:セメントの断層画像(左:A(225 kV)、右:B(100 kV))
撮影後、φ85×42.5 mmの範囲に含まれる直径1 mm以上の空隙をサイズ別に着色しました(図2)。着色部位が青いと空隙が小さく、赤いと空隙が大きいことを表しています。また、直径1 mm以上の空隙に対して空隙率を求めました。
図2:空隙サイズの解析結果(左:A(225 kV)、右:B(100 kV))
得られた空隙の最大サイズ、空隙率を表1に示します。
表1:解析結果
| 空隙の最大サイズ | 空隙率 | |
| A(225 kV) | 19.3 mm3 | 0.48 vol% |
| B(100 kV) | 21.8 mm3 | 0.70 vol% |
結果として、Aでは、X線のエネルギーが十分であるため、空隙の輪郭が明瞭であり、より正確に空隙の抽出を行うことが出来ました。一方、Bでは、X線のエネルギー不足で空隙の輪郭が不明瞭であるため、複数の空隙が一体化して抽出されており、空隙の最大サイズおよび空隙率がともにAより大きくなっています。今回はφ100 mm、高さ130 mm程度の試料を撮影しましたが、CT Lab HVではφ600 mm、高さ1200 mmまでの試料の設置、撮影が可能です。
推奨装置・ソフトウェア
推奨装置:多目的大型マイクロX線CT CT Lab HV
解析ソフト:VGSTUDIO MAX*(欠陥/介在物解析モジュール)
* VGSTUDIO MAXはHexagon Manufacturing Intelligence株式会社の製品です。